文 マンティー・チダ
「TリーグNOJIMA CUP 2022」は14日にトッケイセキュリティ平塚総合体育館(神奈川県平塚市)で男女決勝が行われ、男子はリオデジャネイロ五輪団体銀メダルの吉村真晴(琉球)が決勝まで勝ち進んだものの、張本智和(琉球)にストレートで敗れて準優勝に終わった。
決勝では張本智和にストレートで敗戦、バックハンドのミスが響く
「Tリーグ NOJIMA CUP 2022」は、3月に行われた「2022 LION CUP TOP32」ベスト8入賞者、Tリーグ実行委員会推薦選手、日本卓球協会選出選手によって構成され、男子は16名によるトーナメント方式で開催。Tリーグ選出選手の一人として、吉村真晴は名を連ねていた。
13日の初戦では、篠塚大登(KM東京)とフルゲームまでもつれながら勝利。リオデジャネイロ五輪団体戦で共闘した丹羽孝希(岡山)との2回戦では、ゲームカウント2-2から第5ゲームを吉村真晴がデュースで奪い、その勢いで丹羽を振り切って翌日の準決勝へコマを進めた。
準決勝は、及川瑞基(KM東京)、宇田幸矢(JTTA選出)と全日本チャンピオンに連勝して勝ち上がってきた、愛工大名電高の18歳吉山僚一(岡山)が相手。吉村真晴は、リーグ戦未勝利の吉山に第4ゲームまで3-1とリードをしたものの、1点も取れずに第5ゲームを失うと第6ゲームでは吉山に終盤で逆転を許し、ゲームカウント3-3のタイに持ち込まれるが、最終の第7ゲームで吉村真晴が得意のサーブからフォアハンドの強打などで吉山を振り切り、決勝へ勝ち名乗りをあげた。
決勝の対戦相手は、今季から琉球のチームメートとなる張本だった。1月に行われた全日本選手権6回戦以来の顔合わせとなり、その時は吉村真晴が勝利している。パリ五輪出場を目指す吉村真晴とすれば、張本に連勝することで勢いをつけたいところだった。
第1ゲームを接戦で落としたものの、吉村真晴は第2ゲームの序盤までサーブからフォアの強打を軸に張本と相対していた。しかし、第2ゲームの3-3から張本に8連続失点を喫して3-11とされ、ゲームカウント0-2で連取を許す。第3ゲームから吉村真晴は巻き返しを図りたいところだが、途中からバックハンドのミスが続き、張本に7-11とされて3ゲーム連続で奪われ、第4ゲームに入っても流れは変わらず、吉村真晴は0-4のストレートで張本に敗れた。
コート上で素振りを繰り返しながら状況改善を目指したが・・・
「単純に張本が強かった。穴が無い感じ」
試合終了後、張本の印象を問われた吉村真晴の率直な感想である。特に張本から何かを仕掛けられたわけではないが、バックハンドの凡ミスが最後まで響いてしまう。
吉村真晴は、自分のプレーを見つめ直している段階だった。「プレー中、悩みや迷いが全面的に出てしまった」と決勝戦を振り返る。準決勝の吉山戦までは「フォアドライブで押し切る事、ラリーで点数を取ることが出来ていた」としたが、決勝では「張本の守備力」に圧倒されてしまったのだ。
「バックハンドに関しては、そんなに自信をもっていませんでした。他の選手にはフォアドライブやラリーで点数をとれましたけど、張本から放たれる守備力の高さがプレッシャーとなり、よりよいボールを打たないといけない、より厳しいボールを打たないといけないという気持ちから凡ミスが多くなった。何もされていないのに、張本の圧を自分自身で感じすぎたのかな」と吉村真晴は続ける。
第3ゲームに入ってから、吉村真晴はバックサイドを執拗に攻められたことでバックハンドの凡ミスが続いた。そのたびに、コート上でバックハンドの素振りを繰り返し、タイムアウトやゲーム間でもベンチに腰掛けて素振りをしながら、イメージトレーニングを進めていた。
「チキータの回転量も含めて、自分の距離感が合わなくなっていました。上体が浮いているのかな、前傾姿勢になり過ぎているのかなとか。素振りをしながら色々考えて、『今の打球点、少し早いね』と試合中に独り言で頭の切り替えをしていました。この結果がすべてですし、そこに対応できる自分の実力が必要」と話す。
吉村真晴は、4月に行われたアジア競技大会代表候補選手選考会で優勝を果たし、国際大会にも出場を続けている。パリ五輪に向けて、日本男子卓球界は若手がどんどん育っている中でも、吉村真晴のようにムードメーカーとなる存在が必要となるはずだ。大エースや有望な若手とともに代表争いを繰り広げる吉村真晴のパリ五輪へ向けた挑戦は、まだ始まったばかりだ。