文 マンティー・チダ
ジャパンラグビーチャリティーマッチ2022が6月11日に秩父宮ラグビー場で行われ、NDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)の選手によって構成された「エマージングブロッサムズ」が、日本でプレーするトンガ王国出身の選手を中心とした「トンガサムライフィフティーン」に31-12で勝利した。
田村優が先制、竹山晃暉も持ち味を生かしてトライ
この試合は、2022年1月に発生したトンガ北部海底火山の大規模噴火で甚大な被害を受けたトンガ王国の復興支援などを目的として行われたチャリティーマッチ。トンガサムライフィフティーンは、試合前と試合後に観客席へ向かって「シピタウ」と呼ばれるチームの士気を高める儀式を行い、詰めかけた約8,000人から拍手喝采を浴びた。
試合は前半からハーフエアラインを挟んだ攻防が続いたが、均衡を破ったのはエマージングブロッサムズ。9分、こぼれ球からパスを受けたSO田村優がインゴールへ駆け抜けて先制点をあげる。
24分にはトンガサムライフィフティーンに同点とされるが、26分には相手ラック時からSH茂野海人が隙を狙って勝ち越しのトライ。36分にはターンオーバーをきっかけに自陣から敵陣までパスを回しながらゲインに成功すると、ラインアウトモールからHO堀越康介が押し込んで、エマージングブロサッサムが17-7でリードして前半を折り返す。
後半、トンガサムライフィフティーンのキックオフを受けたエマージングブロッサムズは、自陣から走り抜けて敵陣へ入り込むと、スクラムから展開して最後はWTB竹山晃暉が右隅にトライ、田村もコンバージョンを決めて24-7とリードを広げる。
その後、エマージングブロッサムズはスクラムで優位に立ち、敵陣深くまで入り込むものの、セットプレーやサイドからの突破で攻め手を欠いて追加点が奪えない。ここから、少しずつトンガサムライフィフティーンの時間帯となり、インゴール付近でフェーズを重ねられ、途中出場のシオネ・ハラシリにトライを奪われて、24-12と点差を詰められた。
ペースを握られたエマージングブロッサムズではあったが、自陣で粘りを見せると、トンガサムライフィフティーンのノットロールアウェイから獲得したタッチキックで敵陣へ入り込む。すると後半35分、ラックからNo.8テビタ・タタフが相手選手を交わしながらインゴールに飛び込むと、田村もコンバージョンキックをきっちり決めて31-12とリードを広げて、このままエマージングブロッサムが逃げ切った。
チームを束ねた田村優「結果よりも過程が良かったので嬉しい」
今季のラグビー日本代表は、後に控えるウルグアイとフランスとのテストマッチに向けて、2チーム体制で強化するとし、今回出場した「エマージングブロッサムズ」は、ジェイミー・ジョセフ日本代表HCが「セカンドチーム」と呼んでいる、NDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)の選手で構成。いわば、日本代表候補という位置づけだ。
セカンドチームと呼ばれているものの、キャプテンの田村をはじめ、CTB立川理道やラファエレティモシーといった代表常連組に、WTB竹山晃暉や根塚洸雅ら今季のリーグワンを大いに沸かせたニューカマーも名を連ねている。チャリティーマッチではあったが、「エマージングブロッサムズ」の選手にしてみれば、日本代表昇格に向けてアピールをする舞台でもあった。
そのチームをまとめたのが、前回の2019ワールドカップ日本大会で司令塔を担った田村である。「何より、チームを良くしたいとみんなが思ってやっている。それが形になって、結果よりも過程が良かったので嬉しいです」と田村は試合の成果を強調した。
チームの指揮を執る堀川隆延HCは「(田村)優がしっかりチームを作ってくれたおかげで、選手一人一人のパフォーマンスを引き出すことができた。間違いなくキャプテンの力ではないかなと思います」とチームを束ねた田村を大いに評価する。
追加点のトライをあげた竹山は「トライチャンスをものにできて良かったが、前半でもチャンスでボールをなかなかもらえないことがあった。今後はスペースを見つけてアタックすることがキーとなる。僕たちがやられてから誰かにやり返すのではなく、相手より先手を打つことが重要でそこにフォーカスを置いていきたい」と試合を総括した。
1週間後には、この日と同じく秩父宮ラグビー場でウルグアイと対戦する。この試合のメンバーは、日本代表の一部とNDSのメンバーで挑むことがすでに発表されている。
「全体的にもっと良くなるように頑張ります」と田村は会見でこう言い残した。若手の台頭もあるが、中堅やベテラン勢にとっても、今後の代表活動へ大きな試金石となる。トンガ出身選手の熱い想いを受け取って、エマージングブロッサムズの選手たちは、次のウルグアイ戦でどのようなパフォーマンスを私たちに見せてくれるのか、大いに期待をしたい。