【ラグビー全国選手権大会】今季旋風を巻き起こした近畿大学、名門に敗れるも来年へ繋がる価値ある初戦敗退

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ラグビー
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文 マンティー・チダ

第58回全国大学ラグビーフットボール選手権大会は12月18日、秩父宮ラグビー場などで4回戦を開催。9大会ぶりに復活出場を果たした近畿大学は、慶應義塾大学に10-13で敗れて、初戦で姿を消した。

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関西大学リーグ戦2位通過から9年ぶりの全国切符を掴むも、名門慶大に初戦敗退

©マンティー・チダ

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まさに近大旋風の年だった。前年度関西大学Aリーグ最下位の近大は、今季リーグ戦初戦で学生王者の天理大を23-7で下し、天理大のリーグ戦連勝記録を「32」でストップ。

開幕早々、波乱の幕開けとなった。近大は次戦の同大にも勝利して連勝し、京産大には僅差で敗れたが、その後は4連勝で2位に食い込み、堂々と全国選手権大会への切符を獲得していた。

全国選手権大会初戦の相手は、名門の慶大。序盤からスクラムで慶大と呼吸が合わない中でも、近大は激しくプレッシャーをかけていく。その中から少しずつきっかけを掴み、慶大からペナルティーを獲得しても、ラインアウトではなく果敢にスクラムを選択した。

©マンティー・チダ

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しかし、慶大から徐々に対応をされるようになると、マイボールスクラムで近大にコラブシングが宣告され、慶大SO中楠一期のペナルティーゴールで3点を献上。前半でスコアが動いたのはこの場面だけで、前半終了時点で0-3となり、近大は3点ビハインドで後半へ向かう。

近大は慶大を前半ノートライに抑えていた。「0-3で折り返すのは想定内。体を当てた段階で逆転できる自信はありました」と近大CTB福山竜斗主将は後半の逆転に期待を寄せていたが、後半に入って先に得点をしたのは慶大だった。

©マンティー・チダ

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オフサイドからタッチキックを与えて、慶大に自陣へ入り込まれた近大。左右に展開されて、FB山田響のラインブレイクから、近大は慶大に追加点を許す。中楠にもコンバージョンキックを決められて0-10とされ、近大は慶大とのリードを10点に広げられた。

後半16分、追いかける立場の近大は、ラインアウトから少しずつ敵陣へ入り込み、キックパスからCTB植田和磨が抑えるものの、後半23分、中楠にこの日2本目のペナルティーゴールを決められ、8点ビハインド。近大は慶大に1トライ1ゴールでも追いつくことができない得点差とされた。

流れを変えようと、近大は失点直後にラインアウトからLO宮本学武のラインブレイクで一気に敵陣へ入り込むと、最後は交代で入ったばかりの辻村翔平にトライが生まれて追い上げを図るも、ここから慶大の激しいディフェンスにラインを上げることが出来ず、そのまま試合終了。

近大の今シーズンが幕を閉じた。

来年来た時には、緊張せず近大らしいラグビーをしてほしい

©マンティー・チダ

近大にも、勝利できるチャンスは十分にあった。

福山は「0-3で折り返すのは想定内。逆転できる自信も前半体を当てた段階でありました。ディフェンスで相手にトライを許さなかったことで、後半逆転できると確信していました。後半に、慶大が予想以上にギアをあげてきて、最後きちんと終わらせたかった」と悔やむと、PR紙森陽太副将も「最初は行けるという感触でしたが、慶大が様々な対応をしてきたので、惑わされてペナルティーを与えてしまった。そういうところが慶大の強み」と名門の強さをグラウンド上で感じていた。

そして、何よりも近大は9年ぶりの全国選手権大会で、選手全員が秩父宮ラグビー場で初めて試合を経験する。

「4年間で初めての秩父宮。観客とも距離が近くて、歓声が聞こえました。僕たちの声がより届かないだろうとか、声だけで近大のラグビーに持っていきたかった」(福山)

「会場の雰囲気にのまれてしまった。のまれないようにしても、のまれてしまったので怖いなと感じました」(紙森)

2人の声からもわかる通り、近大は「地に足がついていない状況(中島茂総監督)」だった。相手の慶大は、大学としても多くの実績や経験を積み、秩父宮ラグビー場では何度も試合を重ねている。秩父宮ラグビー場における経験の差も、試合展開を左右する要因となった模様だ。

ただ、今回経験した3年生以下の選手は、まだ来年がある。「来年来た時には、緊張せず近大らしいラグビーをしてほしい」(福山)「今回の経験を来年に繋げて、後輩たちに頑張ってもらいたい」と二人とも後輩へエールをおくる。

残念ながら、全国選手権では初戦敗退となったが、関西大学Aリーグ戦では、強豪を次々に下して堂々2位に躍進。そして、福山や紙森ら4年生の選手は、1年生のころから自分たちで考えながら、ラグビーと向き合ってきた。

「これからもラグビーを続けるので、環境やまわりのせいにするのではなく、自分たちから役に立って、これからも自分自身がさらに成長しなくてはならない」(福山)

「わからないところから作り上げてきたのは大きな学び。自分から発信するタイプではなかった。大学に入ってから、自分から発信することの大切さを学んだので、その経験を次のステージで生かしていきたい」(紙森)

彼らが経験した4年間は、大きな成果となってあらわれた。関西のリーグ戦上位進出へ導いたのは、4年生の頑張りであることに間違いはないし、近大におけるラグビーカルチャーの土台を作ってきたことは確かである。

今度は後輩たちがこれをどうつないでいくのか。来年、近大の成長した姿が待ち遠しいところである。

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