文・写真 マンティー・チダ
やはり、ニック・ファジーカスは「THE KING」だった。
Bリーグ、川崎ブレイブサンダースは10月9日、広島ドラゴンフライズに78-70で下して、ホームゲーム今季初勝利を飾った。前日の8日は、ターンオーバーから広島に得点を献上し、わずか1点差ながら敗れていたが、序盤から#13前田悟のスティールで広島の出足をストップ。川崎は、ここから15点を稼ぎ、序盤で大きく広島をリードした。
この日は、#23マット・ジャニングに加えて、#35ジョーダン・ヒースが欠場し、外国籍選手2名不在という厳しい状況。「もうやるしかない。全員の力が必要」と川崎・佐藤賢次HCは選手に声をかけて、コートへ送り出していた。
1Q残り5分24秒、川崎が15-3とリードした場面で広島にタイムアウトをコールされると、外国籍選手の#2マイケル・ヤングジュニアがファウルトラブルとなりベンチへ。その後、広島に追い上げを許し、気が付けば川崎のリードは2点となっていた。
広島へ流れが傾きそうになった場面で本領を発揮したのが、「THE KING」こと#22ニック・ファジーカスだったのである。
この時間まで、3pを1本決めていたファジーカス。マイケル・ヤングジュニアがベンチに下がると、川崎はファジーカスにボールを預ける。すでにチームファウル4つを数えていた広島は、川崎の得点源に対してファウル覚悟でストップを狙ったが、そのたびにファウルがコールされて、ファジーカスはフリースローラインに立ち続けた。
「あそこでフリースローを決めれば流れに乗れる」と確信したファジーカスは、獲得したフリースローを全て沈める。
「点数が動かない時間帯でしたので、ここで2点ずつ積み上げていくということが大事でした。相手のやる気や闘志を削っていく場面において、フリースローをすべて決めたのが、今日の勝ちに繋がった」とファジーカスはその場面を振り返る。この試合でフリースローを外したのは、3Q残り1分22秒のたった1本。プレッシャーの中で打ち続けたフリースローは13本中12本を成功させた。恐るべき「THE KING」といったところだろう。
先程も触れた通り、この試合はリバウンドやルーズボールで奮闘していたヒースが欠場していた。
「今日は本当にエナジーをもってプレーしよう。ヒースがいない中で、その穴を埋めるためにもいつも以上にエナジーをしっかり出してやっていかないといけない」
ファジーカスは、ヒース不在の中で「特別に気合が入っていた」とこの試合にかける想いを明かしていた。
「自分自身、前日はそこまで良い試合が出来なかった。今日は行動でリーダーシップを見せていきたい」
川崎の「THE KING」として、言葉にも説得力がある。佐藤HCも「今日はニックが色々話をしてくれた」と続ける。
2012年に来日し、川崎の前身である東芝に加入してから11シーズン目を迎えたファジーカス。チームの大黒柱として入団当初から活躍を続けてきた。8月に行われたワールドカップ2023予選では、2019年ワールドカップ以来の日本代表復帰を果たしていた。
チームのピンチを救ったベテランは、今季も川崎の救世主、いや、川崎の「THE KING」であることに間違いはないだろう。