【ラグビー全国大学選手権決勝】帝京大学が大学王者に返り咲き、細木康太郎主将「後ろの押しをもらいながら前に進めたのがとても嬉しかった」

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ラグビー
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文 マンティー・チダ

第58回全国大学ラグビーフットボール選手権大会は1月9日、国立競技場で決勝が行われ、帝京大学が明治大学を27-14で下して4大会ぶり10回目の優勝とした。

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明大を振り切り10度目の大学日本一

 

©マンティー・チダ

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先制をしたのは帝京大だった。前半5分、明大のパスミスから敵陣へ入ると、インゴール前のラインアウトからボールがこぼれたところに、CTB押川敦治が反応してそのままラインに飛び込む。

その後も帝京大が接点で優位に立つと、13分にはHO江良颯のボールキャリーから左右へ展開し、最後はWTB白國亮大が明大2人をステップで交わしてトライ。34分にも決めると、41分には明大のパスをハーフウェイラインでインターセプトし、そのまま独走トライとするなど前半だけで3本のトライをあげて、帝京大が20-0でリードし前半を折り返す。

後半に入り、明大HO田森海音にモールから抜け出されてトライを返されると、その後も明大に攻め込まれる帝京大だったが、自陣で踏ん張りをみせる。

スクラムから明大のコラブシングを誘い、タッチキックでハーフウェイラインまであげてから少しずつ敵陣へ入り込むと、No.8奥井章仁がボールキャリーからインゴールへ。SO高本幹也のコンバージョンキックも決まり、帝京大は27-7とリードを広げる。

35分に、明大FL福田陸人にトライを奪われるが、前半の貯金を生かした帝京大が明大を27-14で振り切って、4大会ぶりの大学王者返り咲きを果たした。

一年間やってきたこと、繋いできたものをすべて出し切る

「完敗です」「帝京大が強かった。自分たちもやり切った」

明大の神鳥裕之監督と飯沼蓮主将が口を揃えて、帝京大の強さを認めた。それぐらい、帝京大は、スクラムとディフェンスの強さが際立っていたのである。

帝京大の岩出雅之監督は「自分たちのやってきたことをしっかり発揮できる試合をしてほしい」と思いながら、「徹底」「貫く」というテーマを選手たちに与えて、「タックルに尽きる試合をしよう」と呼び掛けていた。「ミスはチャンスの入り口」と励ましながら、選手たちに良いマインドを持たせるようにしていたのである。

グラウンドに入れば、15人の選手が話し合いをしながら、試合を進めていくのだが、その中心にいたのが、主将であり強みであるFW1列目を担ってきた細木康太郎。細木は試合が始まる前に「一年間やってきたことをすべて出し切る。繋いできたものをすべて出し切る」ということを選手へ伝えていた。

©マンティー・チダ

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「準決勝の京都産業大学戦では隙を自分たちで作ってしまい、苦しいゲーム運びをしてしまった。この1週間考え直して、試合の始めから厳しいところにFW、BK、全部員ががつがつ行ったことで自信を持つことが出来ました」と細木は決勝戦を総括。80分間を通して厳しく戦ったことから、勝利を手繰り寄せることが出来ていたのだ。

後ろの押しをもらいながら前に進めたのがとても嬉しかった

©マンティー・チダ

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優勝が決まった瞬間、細木は号泣していた。「涙は自然に出ました。嬉しかったのと、今までのいろんなことを思って、涙が出ました」と号泣した理由を明かす。

試合中に細木の想いが爆発したのは、後半20分を過ぎた頃。この時間帯は、明大に1トライ1ゴールを返されて、帝京大がまだ13点リードをしているにもかかわらず、グラウンド上では明大に少し追い込まれていたような雰囲気になっていた。

帝京大は、明大にゲインを許しながら、激しいディフェンスから明大に得点を許さなかった直後、明大のフロントローが2人交代する。

「明大さんがメンバー交代をしてからフレッシュな状態の選手に対し、レフェリーのコールであるクラッチ、バインドのところで、かなり(明大に)プレッシャーを受けていたのですけど、僕としてメンタル的に良くないと思っていて、後ろの押しをもらいながら前に進めたというのがとても嬉しかった。ギャップがまずいところから押し込めたというのは、僕としても嬉しくて感情に出ました」と細木は感情をあらわにした場面の内幕を明かした。

この時間、ペナルティであってもスクラムを選択していた帝京大。明大のフロントローが変わってからも、帝京大はスクラムで明大を押し込める状況を作り出し、勝利へ一歩ずつ近づいていたのだが、細木は試合の勝利を確信したのが「最後、僕が交代でグラウンドから離れて、時計を見た時に79分40秒ぐらいだったとき」と話す。

つまり、細木はどれだけ点差が離れていても、試合に集中していた。実際、試合が止まるごとにグラウンドからは「帝京タイム」という声が響くぐらい、試合が終わるまで「帝京タイム」を貫き通していたのだ。

最後の姿が、細木の成長した姿ではないですか

「細木は、3年生までリーダーシップというよりも、自分中心でプレーをしていた」と話すのは、この試合で3トライをあげた白國である。

「1年間通して、細木のエネルギーがチームに影響を与えてくれた。本当にありがとう、絶対日本代表になってくださいと声をかけたい」と4年間一緒に戦ってきた細木へエールをおくった。

そして、岩出監督が記者会見において、今季限りで帝京大の監督退任を発表する。前人未到の大学日本一9連覇を含め、今回で10度目の優勝を達成。その瞬間を目指して、細木らと戦ってきたのだ。

©マンティー・チダ

試合後のグラウンド上インタビューにおいても、細木の事に触れていた岩出監督。

「精神的に戦う時の強さ、熱量を皆にみせられて、フィールドに答えを出してくれる。特にスクラムに関しては、正直圧倒ですね。安心して、マイボールスクラムからマイボールペナルティにできること、安心して見ていられる。指導者ですらそうですから、選手たちは特にそうだったのではないでしょうか」と細木を中心としたチームは、これまで数々の教え子を送り出してきた名将にとっても、別格の存在となっていた模様だ。

そして、細木の4年間にわたる成長を岩出監督に問いかけてみた。

「最後の姿が、細木の成長した姿ではないですか。青年期は大人と子どもの分かれ道というか。僕は一番彼を信頼しているし、学生たちも信頼してついていっていた。これから就職先で日本代表にも挑戦するだろうから、もっとたくましくなってほしい。できるだろうと期待して、彼の前を想像しながら」

岩出監督は、大学選手権決勝をもって、帝京大監督最後の試合となる事を、細木だけには2,3日前に伝えていた。「学生たちのマインドを下げたくなかったので黙っていましたが、キャプテンは私と一緒に卒業していくので、そういう意味では大丈夫かと」とここでも細木に多大なる信頼を寄せていたことが伺える。

©マンティー・チダ

細木はキャプテンになって、名将や仲間から多大なる信頼を寄せられる存在となった。今度は社会人となって、日本を代表するPRへ。子どもたちのあこがれとなる存在へ駆け上がってほしいものだ。

第58回全国大学ラグビーフットボール選手権大会 決勝
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