※坂井選手の熊本戦出場時間は、キャリアハイではございませんでした。お詫びいたします。該当箇所の修正を行いました。申し訳ございません。(2021年12月16日0:00)
文 マンティー・チダ
Bリーグ、B2のアースフレンズ東京Zは11日と12日、西地区の熊本ヴォルターズと大田区総合体育館で対戦し、2試合連続で熊本に100点を超える失点に終わり大敗した。チームの所属選手において、選手1人が新型コロナウイルス感染症陽性判定、3選手が濃厚接触者と判断されたことで、東京Zは8人で戦わざるを得ない状況となったことも影響する。
厳しい状況下に置かれた東京Zではあったが、ここにきてようやく覚醒が見えてきた選手があらわれた。それは日本人ビッグマンとして、チーム在籍2シーズン目の#13坂井レオである。
久々の29分出場達成、13得点はシーズンハイ
坂井は京都産業大学出身。2016-17シーズンに西宮ストークスでプロキャリアをスタートさせると、広島ドラゴンフライズを経由して、2020-21シーズンに東京Zへ入団。昨シーズンは51試合に出場し、1試合平均出場時間8分、1試合平均得点は2.3点に終わり、日本人ビッグマンとして存在感を発揮するまでには至っていなかった。
東京Zでは2シーズン目を迎え、指揮官がウーゴ・ロペス氏に交代。シーズン序盤こそ、プレータイムが10分を超えることもあったが、ここ数試合は、5分も満たない出場時間だった。
そんな状況下に置かれた坂井に対して、思わぬところからチャンスが転がってきたのである。チーム内で新型コロナウイルス感染症陽性判定の選手が出たこと、それに伴う濃厚接触者が3人いたことにより、チームは8人で戦わざるを得なくなった。さらにインサイドの要である#7ジョシュア・クロフォードがケガの為に欠場。坂井に先発の座が回ってきたのだ。
「出番が増えるだろうなとは分かっていました、臆することなく、これまであまりプレータイムをもらえていなかったので、楽しんでやろうと思っていました」と坂井は、久しぶりのスタート5を楽しみに迎えていたのである。
振り返ってみると、坂井は広島時代に10分を超えるプレータイムとなれば、二桁のスコアを残すなど、チームにしっかりと足跡を残していた。しかし、シーズンが終わり、東京Zからの熱い気持ちにひかれて入団する。
昨シーズンは東京Zで51試合に出場し、インサイドのつなぎ役としてコートに立っていたものの、得点に絡むまでの存在感を出すところまでには至っていなかった。さらに短い時間の出場が多くなったことで、ファウルの数も多くなる傾向にある。
「普段は1分満たない時間の中で、何とか爪痕を残そうとしているので、ファウルが多い印象になっていますが、今日はスタートで出場するので、いつもと同じマインドでやっていてはだめだというのはありました。いつもは絶対止めてやる、バーンでファウルだと思いますけど、今日は少ないメンバーで戦わないといけないというのがあったので、ファウルは少し気を付けましたね」
坂井は久しぶりにスタートから出場するにあたり、冷静に自分を見つめていた。
順風満帆なほど怖いものはない。むしろ、今の状況を楽しめる
熊本との2試合は完敗だった。クロフォードも含め、ロスターから5選手が不在となれば、致し方ない部分もあっただろう。東京Zは開幕から13連敗を喫していたが、その後は愛媛オレンジバイキングス、山形ワイヴァンズ、青森ワッツに1勝1敗としていて、チーム状態が少しずつ上向きとなり、さあこれからという状況での連敗だった。
「僕はマッチアップする選手が外国籍選手ばかりなので、気持ちでは負けない。ジョーダン・ハミルトン、L・J・ピークは速いではないですか。そこにも頑張ってついていこうという気持ちでした」
坂井は、インサイドで奮闘し存在感を発揮。ファウルの数は、熊本の外国籍選手であるジョーダン・ハミルトンやL・J・ピークらとマッチアップしながら、3Q終了時点で1つに抑えることが出来ていた。
「相手の外国籍選手を守りながら、疲労がたまっている中でも守ろうとした姿勢は素晴らしい」とロペスHCは坂井を称える。
「もっとやれたのかな」と坂井は自分のパフォーマンスを分析した。「フリースローも2本外しましたし、フィールドゴールも何本か外しているので。ただ、チームの調子が上がってきたのに、こういう状況になって負けるかもしれないとは一切考えていなかった」と目指すはあくまでもチームの勝利だった。
そして、坂井にとっては、チームの台所事情があったものの、2試合を通して大幅にプレータイムを伸ばすことができ、コーチにもアピールすることができたのである。
「プレータイムが今まで少なかったので、コーチにもアピールできましたし、普段から応援して下さっているファンの方にも、久々に自分がバスケしている姿を見せられた」と坂井は胸を張った。
「チームにとって、今はピンチですが、個人的には大きなチャンスなので存分に生かしたい」
坂井が結果を残した事により、チームの戦術に幅を利かせられるのは、チームにとって大きな収穫だ。ビッグマンが3人コートに入る”ビッグラインナップ”という可能性も見えてくる。
「昨シーズンから3pを打ち出していて、自分の新しい武器にしようと思っていたので、チャンスがあれば確実に決めていきたい。このチームは3pが得意なビッグマンが多いので、その選手をアウトサイドに出して、自分や#25マーク エディ・ノエリアが中に入ってのラインナップはあり得ると思います。コーチには、僕をインサイドとして出しても大丈夫という信頼を得られるように頑張りたい」と坂井は今後に向けて決意表明をした。
最後に坂井は、現在の心境をこのように表現する。
「順風満帆なほど怖いものはない。むしろ、今の状況を楽しめる」
B2リーグ戦は中盤から後半に向かっていく。東京Zは大きく負け越しているが、坂井が活躍したことで新たな可能性も見えてきた。これをチームとしても、坂井としても大きなチャンスと捉えなければならない。明日の成長に向けて、ふもとから登っていくしかないだろう。