文 マンティー・チダ
Bリーグ1部に所属する横浜ビー・コルセアーズ(以下 横浜)は、横浜国際プールで秋田ノーザンハピネッツ(以下 秋田)と対戦。
GAME1は横浜が残り1分31秒からの逆転劇をしたものの、GAME2では終盤、秋田のディフェンスに屈して敗戦。この2試合を1勝1敗で終えた。
2試合ともハードな戦いとなり、接戦となった。
そしてGAME1のハーフタイムでは、昨シーズン高校生ながら三遠ネオフェニックスで特別指定選手としてプレーし、バスケ界に大きな衝撃を与えた#0河村勇輝(東海大学)が特別指定選手としての入団を発表。大きなインパクトを受けた週末となった。
後半勝負を見据えてローテーションを小刻みに回したが・・・

©マンティー・チダ
GAME1を劇的な逆転勝利を飾った横浜。GAME2では、序盤から追いかける展開で始まる。
#7レジナルド・ベクトンがゴール下で存在感を発揮し、#18森井健太もコートに入れば、ディフェンスからハードに戦っていた。
「秋田さんが今日(GAME2)はエナジーのあるディフェンスを出してくるのはわかっていましたので、それに負けないためには自分たちもエナジーを出さないといけない。ディフェンスはエナジーが表われる部分なので、僕が入ったときは自分も含めて周りの選手にも声を出して、エナジーを出させるようにしていました」と森井もその場面を振り返る。
森井がコートに入っている時間帯で、横浜は秋田との点差を詰めていき、前半終盤には#10アキ・チェンバースの3p、森井のドライブインで逆転に成功した。
12月に入ってからの7試合(秋田のGAME1まで)で、前半リードし且つフィールドゴールの成功率やアシストが相手より上であれば勝率がアップするというデータもあり、3Qで得点を稼げる傾向もあったため、横浜の勝利が近づいたと思われたが、現実はそう甘くなかった。
横浜カイル・ミリングHCも「後半はハードになるとわかっていたので、前半でできるだけ選手をはやいローテーションで回していた」と話すほど、後半勝負と踏んでいたが、秋田にそれ以上の対策を仕掛けられていた。
特にベクトンはゴール下で躍動し、前半だけでオフェンスリバウンド4本、リバウンドトータルでも9本を決めている。
「今日一番フォーカスしていたのが、ボールとペイントを守ることでした。前半、相手のガードに中まで簡単に入ってこられたことが多かったので、まずはボールを守ってくれというのが一つ。ビッグマン同士のコミュニケーションやチームとして守れていない、フィジカルにできていなかったというのがもう一つあったと思います」と秋田前田顕蔵HCも前半を総括。
後半に入ると、横浜はスタートに森井を起用。出だしはそれほど悪くなかったが、ベクトンがファウルを重ね始めると、インサイドの強さが生かせなくなって苦しくなった。
「後半から変えたのは、リバウンドというよりもボールに対してよりプレッシャーをかけようと。そして、ペイントにも入れさせないようにという点です。チームの課題はディフェンスリバウンドですが、自分たちのリバウンドへ行く前にどれだけ相手を嫌がらせることができるのかというところにフォーカスをしていました」と秋田前田HCはボールに対してプレッシャーを強めるよう指示を出している。
コートに立っていた森井は、秋田のディフェンスに変化を感じていた。
「後半、秋田のディフェンスが少し変化してハードになってきたことで、受けに回る時間帯がありました。相手のシュートを落とせているけど、こちらのオフェンスの終わり方も良くない。ノーマークを作ってというところまでができていないケースもあったので、そこはガードとしてコントロールをしていかないといけない」と自らのプレーに対して課題を示す。
3Qで秋田に逆転を許した横浜は、4Qに入っても出だしからチェンバース、#22秋山皓太、森井、ベクトンとファウルがコールされ、残り7分2秒にはカーターも個人ファウルを喫し、早くもここでチームファウルが5回目となる。
これ以上ファウルをすると秋田にフリースローを献上しないといけない横浜であったが、#4ロバート・カーターがフックシュートやフローターを入れて1点差まで接近。
しかし、秋田にタイムアウトを請求されると#51古川孝敏に3pを沈められ、横浜は再び追いかける展開とされ、ゾーンディフェンスを敷くなど粘りを見せるが、古川にバックショットを入れられて、69-74と逆転を許す。
最後は生原が連続ファウルで相手にフリースローを供給。
このまま秋田に押し切られた状況となり、69-77で横浜は秋田に敗れる。
秋田のホーム戦では1勝1敗に終わっていた。
前日のGAME1でチームを勝利に導いた森井は「10月のアウェイで2連敗してしまったので、ホームでやり返そうという気持ちをもってみんなで臨みました。とても良い週末になったのではと思いますけど、今日勝ちきれなかったのは、これからもっと変えていかないといけない部分」と手応えを口にしながらも、反省の弁も忘れなかった。
カイルHCも「最後はガス欠になってしまった。最後まで戦って抜いてくれたことについては誇りに思う」とコメント。
前節の信州戦GAME2では、出だしからエナジーを出すことができなかった。
今回は最後まで戦った上でガス欠はしたものの、試合の開始からチームで戦うスタイルを徹底させたことに意味がある。
それだけでもチーム力が上がったと考えてもよいだろう。
河村勇輝の加入でカイルHCがやりたいバスケットスタイルに近づく

©マンティー・チダ
GAME1のハーフタイムには、高校生ながら昨シーズンのBリーグを沸かせた河村勇輝の入団がサプライズで発表された。
河村の能力について、もう疑う余地はないだろう。
河村の加入でポイントガードは3人(ケドリッム・ストックマン・ジュニアはコンボガードのためにカウントせず2番扱い)となり、カイルHCがどのような采配を振るうのかにも注目が集まる。
「2回ぐらいチーム練習へ参加していますけど、練習や過去のハイライトを見た中でとても才能に関しては感じています」とカイルHCも能力を認めていた。
その中で一番やりたい戦術として「ツーガード」をあげる。
「私がやりたい戦術の一つが『ツーガード』だ。河村が入ってくれることで、私がやりたいバスケスタイルに近づいていく」と期待を寄せていた。
同じくポイントガードとして、森井もこのように話す。
「(前半小刻みに選手を変えながら戦ったことについて)ツーガードもそうですが、これからオプションがどんどん増えていくはず。ツーガードがチームの強みになっていくのかもしれない。練習も試合でもアジャストできることが重要」
さらに、河村については「昨シーズン、B1三遠ネオフェニックスでプレーしているときから、僕は見ていました。練習でも、一つ一つのプレーに対して丁寧で、良いプレーがたくさんできる選手です。一緒にコートへ出ている時間帯では、お互いの良さを出せるように、スピードというのは自分もそうですけど、河村選手もありますから、スピーディーな展開を出せていければなと思っています」とコメントする。
横浜は秋田戦2試合を通して1勝1敗という成績に終わったが、最後まで戦い抜くことができていた。
カイルHCも試合展開によって、様々なオプションを駆使しながらタクトを振ってきた。
チームのオプションが増えてきた中で、将来の日本代表PGを狙える逸材がチームに加入することにより、また新たなオプションが増えることだろう。
コロナ渦の影響で、リーグ戦開幕の頃はチームによってメンバーが揃わないという状況もあり、チームの仕上がりに差が出ていたが、各チームでメンバーが揃ってきたことにより、ここからが本当の戦いになるはずだ。
横浜はロスター全員が揃ってから、チームケミストリーが向上している。
そんな中、将来の逸材が加わることでどんな化学反応を起こしてくれるのだろうか。
そして「ツーガード」が強みになるのであれば、「生原×森井」「生原×河村」「森井×河村」という組み合わせが実現することになる。
カイルHCはどこでこのカードを切るのか。その一瞬を見逃さずにはいられない。