文 マンティー・チダ
第58回全国大学ラグビーフットボール選手権大会が1月2日、国立競技場で準決勝の2試合が行われ、明治大学が東海大学を39-24で下して決勝進出。9日に国立競技場で行われる決勝は、明治大学-帝京大学という顔合わせになった。
SO伊藤耕太郎が選手をなぎ倒しながらのボールキャリーで決勝トライ
CTB丸山凜太朗のペナルティゴールで東海大に先制を許した直後だった。明大は前半12分、ラインアウトからWTB石田吉平がインゴールまで一目散に駆け抜けて先制トライ。石田は25分にも左隅へ押し込み、No.8大石康太も続いて、前半だけで3トライ。東海大に21-3とリードして前半を折り返した。
後半立ち上がりから15分までに、東海大から3トライを奪われ逆転を許した明大。
しかし、21分にキックで大きく前進すると、東海大のペナルティからCTB廣瀬雄也のペナルティゴールで同点に持ち込み、26分にはSO伊藤耕太郎が抵抗する東海大の選手をなぎ倒しながら、ボールキャリーからゴールまで駆け抜けて勝ち越しのトライをあげた。
32分にはFL福田陸人のゲインで敵陣に入ると、FB雲山弘貴のブレースキックから途中出場の齊藤誉哉が押さえて、東海大に12点のリード。37分には廣瀬がこの日2本目のペナルティゴールを決めて勝負を決定づけて、このままノーサイド。明大が39-24で東海大を下して、2大会ぶりの決勝進出を決めた。
準決勝はこうでなくちゃ面白くないだろう
「今日は走り回り東海大を疲れさせて、明治の持ち味であるクイックテンポから展開する」
明大のキャプテンであるSH飯沼蓮は、東海大の強力なFWを警戒し、バックス勝負になる事を考えていた。「早稲田戦ではFWに頼ってしまったので、今回はバックスが試合の流れを作って引っ張ろう」と明大は準々決勝の早稲田大学戦で、FWのトライから勝利をしていただけに、飯沼をはじめとしたバックスは、東海大のFWが強力だからこそ、自分たちの出番だと見ていた。
前半は石田の2トライで優勢に立ちながら、後半は東海大に走られて3トライを奪われて逆転を許したが、飯沼はその展開を楽しんでいた。
「(前半終了時点で)後半多分トライも取られるし、同点になる可能性もあるから、そこはしっかり心にとめておこうと話をしていました」
飯沼は前半をリードで折り返しても、東海大に追いつかれるところまで想定。実際、3トライ目を取られた時には「準決勝はこうでなくちゃ面白くないだろう」とグラウンドに立っていた選手へ声をかけている。「全員を前向きにして、これで勝ったらもっと面白くなるし、点数開いて勝つよりもタフなゲームを制したほうが自信になる」と続け、選手全員へ起こりうる焦りを事前に無くしていた。
実際、飯沼は試合前から「タフなゲームになる」と。「こういうシチュエーションになった時、しっかり一つになる。やることを決めて、そこでもう一回生まれ変わってから、いつも通りのプレーをしよう」とチームに声をかけている。「それが出来て良かった」と飯沼は手応えを掴んでいた。
神鳥裕之監督は「タフなトーナメントを一つ一つ勝ち上がっていく選手たちを頼もしく思いながら、試合中は見ていました。東海大の最後まであきらめない姿勢、後半の厳しい時間帯をしっかり乗り切って、流れを取り戻したことを胸に、次の決勝へ向けて準備をしたい」と飯沼を中心としたチームの成長に目を細める。
決勝の相手は、帝京大学に決まった。対抗戦の時は、後半ずっと敵陣で攻めていたのにも関わらず、帝京大の激しいディフェンスに合い、勝ち越すまでには至らなかった。しかし、あの時の明大とは違うはずである。帝京大にも強力なFWが控える。だからこそ、この日のようにバックスの活躍が必須となるはずだ。
「決勝はこうでなくちゃ面白くないだろう」と飯沼がチームに声をかけることができるのか。昨年の王者である天理大、対抗戦で敗れた早大、リーグ戦を制した強力FWを持つ東海大とタフな相手を下して駆け上がってきた決勝の舞台。この経験を、決勝の舞台でこそ生かさないといけないだろう。