文 マンティー・チダ
トップリーグ第4節は秩父宮ラグビー場で20日に1試合が行われ、13日の試合で雷雨のため順延となっていた、レッドカンファレンスのサントリーサンゴリアス(以下 サントリー)と東芝ブレイブルーパス(以下 東芝)が対戦し、サントリーが73-5で圧勝しリーグ戦4連勝を果たした。
サントリーと東芝はともに東京都府中市を本拠地とし、トップリーグでは最多の優勝回数5回を誇る。
これまでも「府中ダービー」と称され、数々の名勝負を繰り広げてきた。
今シーズン初対戦となった13日の試合では、前半12分32秒に雷雨で試合中止となり、この日に再試合が組まれていた。
本来ならばこの週はバイウィークのはずだが、サントリーは開始早々から試合の主導権を握り続ける。
サントリーが名門東芝との「府中ダービー」を制する
サントリーは、前半7分に東芝のオフサイドから、SOボーデン・バレットがペナルティーキックで先制するなど3本のペナルティーゴールで東芝を9-0とリードする。
その後もバレットを中心に攻撃を組み立てるサントリーは、前半17分にタッチキックで敵陣25mラインを超えたところまでボールを進めると、CTB中村亮土のショートパントが右サイドのWTB中野将伍へ渡りトライ。
さらにサントリーは、味方のハイパントからWTBテビタ・リーがボールを奪取すると、左サイドを駆け上がり敵陣10mライン付近まで到達、パスでさらに前進を図ると、中村からパスを受け取ったCTBサム・ケレビがステップを使って、クロスバー下にトライ。バレットのコンバージョンも決まり、24-0とリードを広げる。
終盤にかけても、サントリーの攻撃は止まらない。
29分にはリー、37分にはNO・8テビタ・タタフがトライをし、サントリーが東芝に38-0として前半を折り返す。
後半に入っても依然サントリーのペースで試合が進む。
2分には、タタフが右サイドを上がると、バレット、中村とパスが渡り左サイドへ、最後はゲレピがトライをするなど7点を加算し45-0とする。
守備でも、東芝が独走になりかけたところで、バレットが後方から体をうまく入れてノックオンを誘うなど、相手にも隙を与えなかった。
サントリーはこのタイミングで一気に5選手を入れ替えるが、13分にはタタフ、15分にはリーがトライするなど、リードをさらに広げて59-0とする。
その後、東芝に1トライを許すが、サントリーは最後まで優勢に試合を進め、73-5と東芝に圧勝し、リーグ戦4連勝を果たした。
マインドセットをしてサントリーのラグビーを見つめ直す
名門同士の対戦は、思わぬ大差がついた結果となった。
終わってみれば、サントリーが9トライの圧勝で、東芝に1トライを許したものの、主導権を握り続けたと言っても過言ではない。
自陣の25mラインを超えさせたのは、トライを決められた場面も含めて3回ぐらいしかなかった。
本来ならば13日に試合が行われて、この日はバイウィークの予定だった。
チームとしても、どう気持ちを立て直すかというところに主眼が置かれる。
サントリーのミルトン・ヘイグ監督は「メンタルの準備が重要だ」とチームに伝えていた。
その言葉通り、チームもマインドセットができていてこの日の大勝に繋がる。
「良いプレッシャーも与えられ、ターンオーバーも取れた。チームの総合力が出た試合」とヘイグ監督は結果と共に内容にも満足したようだ。
中村主将も「もう一度自分たちのラグビーを振り返ることに専念した。イレギュラーなことに対しても、マインドセットしながら前向きに取り組んできた」と監督と同じようなコメント。それだけ、チーム内でしっかり共有できていたことが伺える。
ここにサントリーの強さが凝縮されているのではないだろうか。
世界最高のサントリーSOバレットがキックと守備で観客を魅了
そして、この日もSOとしてチームを牽引したバレット。
ニュージーランド代表キャップも84を数え、2015年、2019年のラグビーワールドカップではニュージーランド代表に選抜されるなど、世界最高のSOと称されている。
開始早々から相手のペナルティから得たキックを確実にゴールへ結びつけ、キックを多用した攻撃を組み立てるなど、24得点。
ここまでリーグ戦4試合に出場して76点を稼ぎ、得点ランキングも2位以下を大きく引き離している。
そんなバレットにも、東芝の情報はしっかりインプットされていた。
「東芝はスピードを上げてディフェンスをするため、キックスペースがあれば狙っていこうと考えていました。チームからもローカルダービーの重要性について話をしてもらっていた。中断した試合では東芝のフィジカリティーを感じていたので」
バレットからは適応能力の高さを感じ、それがチームの好調に繋がっていた。
今シーズンは最後のトップリーグで、サントリーは6度目の優勝を目指している。
リーグ戦ではこの後、トヨタ自動車、クボタとここまで全勝としているチームの対戦が続き、その先には負けたらそこで終わりのプレーオフトーナメントが控えている。
リーグ戦の成績がそのままプレーオフへ直結することではないが、サントリーとしてもリーグ戦のうちに総合力をあげておきたいところだろう。
そのためにも、自分たちのラグビーを常に見つめ直していくことが求められる。トヨタ自動車やクボタとの対戦によって、サントリーの現在地を知るのだろう。