文 マンティー・チダ
一般社団法人ジャパンラグビートップリーグは7月16日、2022年1月7日から開幕するラグビー新リーグの名称を「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE (ジャパンラグビーリーグワン)」と発表した。「みんなのためにFOR ALL」を合言葉に、ビジョンを「あなたの街から世界最高をつくろう」と設定したジャパンラグビーリーグワン。参入する24チームの顔ぶれは以下の通り。
※チーム名は呼称、カッコ内はホストエリア自治体
DIVISION1
グリーンロケッツ東葛
(千葉県我孫子市、柏市、松戸市、流山市、野田市、鎌ヶ谷市)
シャイニングアークス東京ベイ浦安
(千葉県浦安市および周辺地域)
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪
(大阪大阪市)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
(東京都江戸川区、中央区、千葉県市川市、船橋市、千葉市、市原市、成田市)
コベルコ神戸スティーラーズ
(神戸市)
埼玉ワイルドナイツ
(埼玉県)
静岡ブルーレヴズ
(静岡県)
東京サンゴリアス
(東京都、港区、府中市、調布市、三鷹市)
東芝ブレイブルーパス東京
(東京都、府中市、調布市、三鷹市)
トヨタヴェルブリッツ
(愛知県豊田市、名古屋市、みよし市)
横浜キヤノンイーグルス
(横浜市)
ブラックラムズ東京
(東京都、世田谷区)
DIVISION2
釜石シーウェイブス
(岩手県釜石市)
花園近鉄ライナーズ
(東大阪市、大阪府)
日野レッドドルフィンズ
(東京都日野市、八王子市および周辺地域)
スカイアクティブズ広島
(広島県)
三重ホンダヒート
(三重県)
三菱重工相模原ダイナボアーズ
(神奈川県、相模原市)
DIVISION3
九州電力キューデンヴォルテクス
(調整中)
クリタウォーターガッシュ昭島
(東京都昭島市)
清水建設江東ブルーシャークス
(東京都江東区)
中国電力レッドレグリオンズ
(広島県)
豊田自動織機シャトルズ愛知
(愛知県)
宗像サニックスブルース
(福岡堅宗像市)
フェーズ1は競技力をベースに「スタジアムの確保」を目指す
こうして24チームの呼称(公式チーム名称は別途設定あり)を並べてみると、ルール上は問題ないという認識でも、せめてトップを形成するDIVISION1のチーム呼称から企業名を外してほしかったのが本音だ。ジャパンラグビーリーグワンのビジョンとして「あなたの街から世界最高をつくろう」が盛り込まれている。もちろん、興行としての役割もあるが、チームがホストエリアとして設定した地域に対して、どのようなアプローチをしていくのかも大事な要素になるからだ。
リーグとしては今後11シーズンに渡って、3段階でリーグを成長させることも発表された。大きくは「高質で均衡した試合の醸成」「ホスト&ビジター形式の実施」「一定期間固定化されたわかりやすいフォーマット」という3つをベースに、DIVISION1は12チーム、DIVISION2、DIVISION3はそれぞれ6チームと設定。DIVISION1は6チームずつのカンファレンスに分けて2回戦総当たりとし、上位2チーム(予定)はクロスボーダーマッチ出場権の獲得。DIVISION間の入替戦も実施するとした。
新リーグ概要発表に至るまで様々なことが起こったようだが、この記事では「この新リーグを今後どうしていくのか」というところに目を向けることにする。リーグからは、2022シーズンからの3シーズンを「フェーズ1」とし、以下フェーズ2、フェーズ3と段階的にリーグを発展させるとした。
では、肝心の「フェーズ1」において、どこに一番着眼点を置いていくのか。「これからの3年間は、ディビジョン間の入れ替えを競技力によって定めていきながら、リーグ全体の事業性を高めていく」と一般社団法人ジャパンラグビートップリーグの池口徳也理事は、フェーズ1の方向性を示した。
フェーズ2に向けて、池口理事は事業性を高めるためのカギとして「スタジアムの確保」を最重要課題とする。「参入頂いたチームのみならず、リーグ、ラグビー協会としても、ラグビーで活用できるスタジアムを確保し、チームがスタジアムを中心にしっかりとした事業性を高めていただくことが重要」とスタジアムを中心としたチーム作りを参入したチームには求めていくようだ。
ただ、目標を達成するための明確な数字目標は「現時点で確定していない」とした。「基礎参入要件に変更はありませんが、その先の事業においてどのようなありかたなのか、社会連携の在り方とか、試行錯誤しながら定めていきたい。いずれはライセンスという制度に昇華させていく必要もある」とリーグとしてはフェーズ1を試行錯誤しながらの3年間とする。
3年間で試行錯誤しながら、ホストエリアの見直しを実施
今回参入した24チームのホストエリアを改めて確認してみたい。JリーグやBリーグに比べると、全体的に広範囲でチームの呼称を確認しても、都道府県を跨ぐ形で地域名が記されているもの、「東京ベイ」のような正式な地名でないものまで記載されている。さらに、チームによってはホストエリアの重なりまであり、一般社団法人ジャパンラグビートップリーグの東海林一専務理事は「チームの皆様が活動を広げていただく、いわばラグビーの商圏といったところで大切な部分。最初の3年間で色々試行錯誤する期間として定める。各チームの取り組みから適切な見直しをはかっていく」と話した。
これからの3シーズンは、DIVISION間の昇降格からリーグ全体の競技力向上を最優先にする構えだが、この「ジャパンラグビーリーグワン」をベースに日本全国へラグビー文化を根付かせる役割もある。そのためには地域とのかかわりを強化することが必要だ。
池口理事は「他のスポーツリーグと異なるのが、このリーグは日本ラグビー協会と参画する24チームの共同事業で、日本ラグビー協会は会員として参画しています。そこは利益相反ではなく利益を一つにし、一体となってラグビー発展のために進めていこうという運営形態を選択しました。日本代表をはじめ、ラグビーの普及をする上で、日本ラグビー協会と新しいリーグの運営法人を含めたジャパンラグビーリーグワンは一つとして、ラグビー界を発展させていきたい」と協会とリーグは一枚岩と強調する。
ラグビー新リーグは、比較的環境に恵まれている
今回のラグビー新リーグは、比較的環境面にも恵まれた状況だと考えられる。比較対象として、同じチームスポーツの男子バスケットボールと比べてみることにした。
男子バスケットボールは、FIBA(国際バスケットボール連盟)から資格停止処分を受けたことで、川淵三郎氏を代表とする「JAPAN 2024 TASKFORCE」を2015年4月に発足し、1年5か月後にはBリーグが誕生した。日本の男子バスケ界はBリーグが開幕するまで、2つのリーグ「bj」「JBL(後にNBL)」が存在し、2008年にはFIBAから「1国1リーグが望ましい」と通達されるが、改善とまではいかず、JBA(日本バスケットボール協会)のガバナンス改善、男子日本代表の強化と共に、FIBAから制裁を受けることになる。Bリーグは日本の男子バスケ界において、国際的に追い込まれたところから誕生したので、状況としては厳しいものだった。Bリーグが誕生してから、男子日本代表は21年ぶりに自力でワールドカップ出場を果たし、東京五輪でも開催国枠として出場を決めている。
それに比べて、ラグビーは環境面においても恵まれているのではないだろうか。競技面では、2015年ワールドカップの予選プールで強豪の南アフリカを下し、2019年ワールドカップでは当時世界ランキング2位のアイルランドを下すなど、史上初のベスト8進出を達成し、世界の中では着実に結果を残してきた。加えて、昨シーズン限りで終了したトップリーグにおいても、最終シーズンでは現役NZ代表のスタンドオフでワールドラグビー年間最優秀賞の獲得経験があるボーデン・バレットなど、大物外国人選手が続々と来日。これこそ、日本代表がワールドカップなどの国際試合で結果を残してきたからこそ実現できたのである。
「日本人の選手が伸びないと日本代表は強くならないということをワールドカップで実感しました。それをベースに強化をしていきたい」と森重隆理事長は、個人的な意見という前提でリーグにかけるおもいを話す。日本人選手の強化も必要だが、競技面では十分に世界で通用できるところまで持ってきた。事業面でも、企業を中心にある程度見込みはある。あとは、地域へラグビーの文化を広げられるか。そのためには、チームがホームエリアから認知されることだろう。「おらがラグビーチーム」となるためにも、競技力を武器にホームスタジアムを核として、地域から愛されるチームが多く誕生し、その結集によって形成された「ジャパンラグビーリーグワン」であってほしい。