文 マンティー・チダ
Bリーグ、川崎ブレイブサンダース(以下:川崎)はホームのとどろきアリーナに、レバンガ北海道(以下:北海道)を迎えて、10月23日と24日と対戦し、1勝1敗で終えた。
23日のGAME1では、2Q残り4分1秒から#35ジョーダン・ヒースがコートに戻り、#22ニック・ファジーカス、#34パブロ・アギラールとビッグマンの3人が揃い踏みしたビッグラインナップとすると、アギラールのジャンパー、ヒースのスティールから藤井、アギラールと渡ってファストブレイクを成功させ、さらに、ファジーカスと藤井にも得点が生まれる。その間、北海道を無失点に抑えたことで、川崎が41-31とリードを広げて前半を終えた。
前半の勢いで、川崎は後半開始からビッグラインナップの布陣で臨み、残り3分まで続ける。4Qに入ると、3Qまであまり出番がなかった#11増田啓介と#13前田悟が10分間コートに。このところ、プレータイムが減少傾向にあったものの「今日のようなプレーをしてくれれば」と佐藤賢次HCは2人を評価していた。
川崎のビッグラインナップは強みとなる戦術
改めて、川崎の目玉戦術はビッグラインナップである。これは、2018年4月にファジーカスが日本国籍を取得して帰化選手枠となったことから実現したものであり、この戦術を強みにしてからは、実質3シーズン目に突入した。
2019-20シーズンからチームに在籍し、ビッグラインナップの一翼を担うヒースは「昨シーズン同様、ビッグラインナップは自分たちの武器であり、磨いてきたものをしっかり継続できれば」とチームの強みとなる戦術に自信をのぞかせていた。
GAME1で初めて川崎のビッグラインナップを体感した、北海道#21ショーン・ロングは「川崎さんの強みになる素晴らしい戦術の一つ。ヒースのブロックショットに苦しめられた」とコート上で脅威を感じている。
ビッグマンが3人入ることで、サイズのミスマッチからイニシアティブを獲得できやすくなるのだが、これが得点に繋がらないとなれば厳しいものになる。
GAME1では、その強みを発揮して北海道を下した川崎だが、24日のGAME2では、開始から北海道の激しいディフェンスを受けてしまい、守り合いの展開に。途中で川崎はビッグラインナップとしたが、得点が伸びず、2Qでは開始から5分間ノーゴール。一時は藤井とファジーカスの得点でカムバックするものの、4Qに入るとシュートがことごとくリングに嫌われ、北海道にリードを許して試合終了。川崎は今季初のホーム黒星で、北海道にもBリーグで初めて、とどろきアリーナで敗戦した。
シュートが入らないとボールが止まってニックを頼りがちに
今シーズン、川崎は「MOVE」というチームスローガンを掲げる。このスローガンには「試合中、常に選手全員が激しく動くチームである」、「見てくれる人たちを感動させるプレーをする」、「未来に向かって全員で動き出す」という3つの思いが込められており、選手・スタッフらチームが1シーズンを戦う際、チームに必要な意識や姿勢を表す標語となっている。
佐藤HCは「ビッグラインナップの時もノーマルラインナップの時も、仕掛けて出来たアドバンテージを全員で人とボールをしっかりと動かして、空いた人が良い判断をしていくというのを目指している結果、誰に頼るということではなく日本人選手のシュートアテンプトも増えているのかな」とここまでの成果を強調するが、「シュートが入らないとボールが止まってニック(・ファジーカス)を頼りがちになってしまう」と反省点も忘れない。実際、GAME2でチームが獲得した63点のうち、ファジーカスは約半分の28点を獲得していた。
ファジーカスを頼るようになってしまえば、ファジーカスの出場時間帯を長くするしか得点が期待できなくなってしまう。GAME2では35分強出場していた。「空いた人が良い判断をしてシュートを打つ」ことを目指すにしても、シュートが入らなければ、入る確率の高い選手を頼りにせざるを得なくなるのだ。
各チームも川崎のビッグラインナップに、対策を練っていることだろう。「どこのチームも対策をしてくるので、そこから始まるムーブ、チームとして攻める形を追求していこうと思う」と佐藤HCも口にしている。
となれば、ノーマルラインナップの時間帯で、優位に試合を進められるのかがカギ。川崎は2試合とも、藤井と篠山のツーガードでスタートをしていた。「一番安定しているし、今のチームの軸」と佐藤HCは起用の理由を明らかにするが、そこに若手の増田や前田らがローテーションで起用されて、プレータイムが伸びスコアが安定することで、「ニックに頼る」という傾向を抑えることができるだろう。
「勝つためのピースとして、GAME1のようなプレーをしてくれれば、プレータイムは増えていく。もっとチームに欠かせない選手になっていくと思います」と佐藤HCは2人に期待を寄せていた。
今シーズンの川崎を眺めると、若手の増田、前田、#20綱井勇介以外では、年齢が30前後から中盤の選手たちで多くを占められている。若手3選手がプレータイムを獲得することで、自ずと川崎のチーム力が上がってくることになるわけだ。
ビックラインナップやファジーカスの得点力は川崎の強みであるが、対戦チームはその強みを消しに来る。試合によって、選手それぞれ好不調の波はあるが、何かの戦術や特定の選手に頼るのではなく、今こそ「MOVE」のスローガンにあるような、空いた人が判断良くでき、得点を決めることができるのか。念願のリーグ制覇に向けて、まだシーズンは始まったばかりだ。