文 マンティー・チダ
Bリーグ、チャンピオンシップ(CS)セミファイナルが5月22日にとどろきアリーナで行われ、川崎ブレイブサンダースは宇都宮ブレックスに73-77で敗戦。前日の21日も敗れていたため、川崎はここで姿を消すことになった。
GAME2は最後までもつれるも、宇都宮に終盤引き離されて敗戦
川崎は昨シーズンに続き、CSセミファイナルで宇都宮と顔を合わせた。前回は宇都宮のホームアリーナである、ブレックスアリーナ宇都宮で対戦し、この時も宇都宮に連敗してシーズンを終えている。
レギュラーシーズンでは、千葉ジェッツ、アルバルク東京、宇都宮と最後まで東地区優勝争いを演じて2位に入ったことから、川崎はクォーターファイナルのホームアドバンテージを獲得。千葉Jが宇都宮にクォーターファイナルで敗れたことから、同じく名古屋ダイヤモンドドルフィンズに勝利した川崎がレギュラーシーズン全体順位で宇都宮を上回っていたために、ホームアリーナのとどろきアリーナでセミファイナルを戦うことになった。
クォーターファイナルでは名古屋Dに連勝し、万全の態勢でSFへ向かうはずの川崎ではあったが、SFではビッグマンの一角である#34パブロ・アギラールが欠場。このため、川崎の強みであるビッグラインナップが使えないという状況で、宇都宮戦を迎えていた。
GAME1で川崎は終始追いかける展開から、終盤接戦に持ち込むも僅差で敗戦。後がない状況となったGAME2。
その立ち上がりは、前日に勝利してファイナルへ王手をかけていた宇都宮にペースを握られる。#6比江島慎に3本の3pを決められるなど、残り6分23秒に川崎がタイムアウトをコールするまで4-13と大きくリードを許した。
しかし、タイムアウトをきっかけに川崎は、#23マット・ジャニングや#22ニック・ファジーカスがペイントエリアで得点を稼ぎ始めると、ジャニングがこの試合チーム初の3pを沈めて15-15の同点とし、#35ジョーダン・ヒースのファストブレイクで19-15と宇都宮をリードして1Qを終える。
2Qに入っても接戦となり、川崎は終盤にファジーカスからのパスがジャニングへ合わず、そこを見逃さなかった宇都宮#18鵤誠司にスティールからファストブレイクを許してしまう。結局、28-31で川崎は3点ビハインドで前半を折り返した。
後半に入っても緊張感が漂う展開が続き、52-52で3Qを終えると、4Qに入っても終盤までクロスゲームとなった。残り1分32秒、川崎は宇都宮・鵤に再びファストブレイクで67-67の同点に持ち込まれると、比江島にはドライブを仕掛けられて、フリースローで得点を許す。
その後、川崎#7篠山竜青にアンスポーツマンファウルがコールされるなど、そこで得たフリースローを宇都宮が確実に沈めて加点。ここで突き放された川崎は宇都宮に73-77で敗れて、リーグ初年度以来のファイナル進出を逃した。
強度の高さ、対策の仕合、戦術の作り合い。楽しいなと思う部分もあり、まあ悔しいですね
またしても川崎は、CSセミファイナルの壁に阻まれた。レギュラーシーズンでは勝率で千葉Jに地区優勝を譲ったものの、勝利数では川崎が一番多く積み上げていた。激しい地区優勝争いを演じて、ホームアドバンテージを獲得した川崎にしてみれば、セミファイナルをホームのとどろきアリーナで迎えることができたのは、何よりも朗報だったはずである。
長いスパンで戦うレギュラーシーズンとは違い、CSは3戦2戦先勝方式であるため、とにかく2勝しなければならない。「2勝すればよい」という響きは良いが、短いスパンで決まる「短期決戦」となるため、勝つことへの貪欲さがより一層求められるのだ。
GAME1の21日で、川崎はセカンドチャンスとターンオーバーから44失点を喫していたが、この日は最後まで締まったゲーム展開となり「本当に紙一重だった(川崎・佐藤賢次HC)」と、どちらが勝利してもおかしくない状況だった。
川崎の選手は最後まで泥臭くプレーを続け、「選手は最後まであきらめずにボールを追いかけて頑張ってくれた」と佐藤HCは選手に感謝する。
ただ、この「短期決戦」を乗り越えない限り、Bリーグの優勝には手が届かないのも事実。「天皇杯で優勝をしているので、特に苦手意識はなかった」とした佐藤HCではあるが、「痺れる場面がたくさんありました」とコート上では緊迫感が漂っていたのである。
「レギュラーシーズンとは違う、チャンピオンシップの強度の高さ、対策の仕合、戦術の作り合いというか。そこは楽しいなと思う部分もあり、まあ悔しいですね」と佐藤HCは言葉を選びながら振り返った。
「メンタルの準備から勢いを作ることプラスアルファで、どうやって勝つのか。例えば、ディフェンスであれば何を我慢して、何を止めて、そこをぶれずにずっとやり続けながら、試合の流れを読んで途中で戦術を変えるとか。そういう部分のチームとしての硬さというか、そういうものをもっと身に着けていくためにはどうすればよいのか」と改めて短期決戦の厳しさを目の当たりにする。
どれだけ勝ちに飢えられるのか。レギュラーシーズンとこの2試合は全く違うものだから
長年、川崎の大黒柱としてチームを支え、宇都宮戦もアギラール欠場に伴い、2試合ほぼフル出場を果たしていたファジーカス。東芝時代のNBL2015-2016シーズン以来、川崎はリーグ戦のタイトルから遠ざかっていて、Bリーグではリーグ優勝がまだ達成できていない。
「ビッグラインナップが使えなかったのは痛手」と振り返ったファジーカス。レギュラーシーズンではリーグトップの得点力を誇り、それを売りにしてきた川崎にしてみれば、このビッグラインナップで得点を稼ぐ時間帯を作っておきたかった。「点を取れない時間帯を作ってしまったことが、最終的な点差になった」とファジーカスはセミファイナルの敗因を分析する。
NBL時代では、短期決戦でも力を発揮してきた川崎。Bリーグになってから、各チーム間の戦力差が無くなってきたこともあり、リーグ初年度のファイナルで栃木(現宇都宮)に敗れて以来、ファイナルへの進出ができていない。ファジーカスはNBL時代から得点源として、チームの勝利に貢献する。
「勝つ意欲や意識の高さの違い、対戦チームのスカウティング、そういった部分が重要になる。どれだけ勝ちに飢えられるのか。レギュラーシーズンとこの2試合は全く違うものだから」
いかにリーグ王者への道が厳しいのか。長いレギュラーシーズンで結果を残して、短期決戦となるCSでは2勝しなければ次へは進めない。「Bリーグ初年度からずっと王者になるんだと強く思っている。そこへたどりつきたい」と改めてBリーグ王者への思いを口にしたファジーカス。
来シーズンこそ念願のリーグ戦王者へ。セミファイナルの壁を突き破る戦いが川崎には待っている。