【大学女子バスケ】東京医療保健大学インカレ4連覇達成の裏側にあった「恩塚亨監督の変化」

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バスケットボール
©マンティー・チダ
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文 マンティー・チダ

東京医療保健大学女子バスケットボール部は2020年12月、全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)4連覇を達成する。

関東大学リーグ戦では最終戦で対戦した白鷗大学に僅差で敗れて準優勝に終わるが、インカレの決勝で再戦し見事にリベンジを果たしての優勝だった。

戦前の予想でも、東京医療保健大学の4連覇は堅いと思われていたが、今回その裏側を知ることに。

そこには「恩塚亨監督の変化」がカギを握っていたのだった。

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「ワクワクしてほしいのです」恩塚亨監督

2021年3月25日、東京医療保健大学五反田キャンパスにおいて「今のバスケット界に広めたいマインドセット発表会~成長に繋げるマインドセットとは~」が開催された。

東京医療保健大学をインカレ4連覇に導いた恩塚亨監督が最初に檀上へ上がり、穏やかな表情でこんな言葉からプレゼンがスタートする。

「ワクワクしてほしいのです」

プレーする選手、保護者やバスケットボールに関係するすべての方に「ワクワクしてほしい」と切り出した。

続けて「私は昨年最高の結果を得ることができました」とインカレ4連覇について言及し始める。

結果=何を×どんな心で
最高の結果=志を×ワクワク

といった「成功の方程式」を示した上で、正論より目標に対するワクワク度が重要であるとした。

ワクワクするコーチのマインドとしては「コーチも選手と共に幸せになりましょう」とし、コーチの定義として「選手の心のエネルギーをいっぱいにする」、コーチングの目的を「選手とチームの命を輝かせる」と話す。

恩塚監督は自らにおけるコーチとしての定義を、このシーズン中に完成させていたのだ。

「戦略」を中心に据えたチーム作りに自信も・・・

少しカレンダーを戻してみよう。

2020年9月、関東大学リーグ戦開幕に向けて準備が大詰めを迎えていた頃、恩塚監督にリーグ戦開幕前ということで取材を実施していた。

それまでチームを引っ張ってきた最強世代と呼ばれる選手たち(岡田英里、藤本愛妃(以上、富士通)、永田萌絵(トヨタ自動車)、平末明日香(トヨタ紡織))が卒業し、さらに新型コロナウイルス感染拡大から春の選手権大会や新人戦が軒並み中止となったことにより、関東大学リーグ戦が新チームとして初の公式戦となっていた。

恩塚監督は、女子日本代表のアシスタントコーチとして東京オリンピックに帯同するはずだったが、新型コロナウイルス感染拡大からオリンピック開催が1年延期となったことで、読書をする時間が増えていた。

そして、コロナ禍から「死」を意識するようになり、選手との向き合い方について見直しをしている。

「私はコーチとして、成長したいと願っているプレイヤーの力になるために努力する人生、それにより私はプレイヤーが成長する姿を見ることで幸せになれますし、プレイヤーは偉そうかもしれませんが、学びがある中で成長することができることを喜びとした人生を送りたいと考えています」

恩塚監督はこのような考えのもとで、選手を通してチーム作りを実行していた。

「その選手が求めている、一番あてはまるコーチングが的確に言葉を使ってできることです。私はこれまで点を取るための戦術ばかりを考えていましたが、戦略についてあまり考えたことはありませんでした」

つまり「戦略が重要だ」と説き、最後には「能力ではなくバスケで勝負」と言い切る。この新チームはこれまで出場時間の少ない選手が中心を担ったため、このような発言に至っていた。

リーグ戦開幕2連勝でも起こった「葛藤」「不安」そして「変化」

©マンティー・チダ

関東大学女子リーグ戦の開幕を迎えたことで、東京医療保健大学はインカレ4連覇への道が始まる。

開幕戦の山梨学院大学とは113-69、2戦目の日本体育大学戦は82-72と接戦を制し2連勝。連勝スタートで好発進したもの思われていたが、その裏側では様々な葛藤が起こっていた。

リーグ戦開幕まで練習からスキルや戦術、戦略に取り組み、その成果が連勝という結果をもたらしていたのだが、PGの木村亜美は「勝ったのに喜べない」と自身のプレゼンで告白をする。

選手にしてみれば、バスケットボールが楽しくて入部したはずなのに、勝たなければいけない「義務感」を感じ、シュートが入っていても「次は入るのか」と不安に襲われていた。

「不安」

木村だけでなく、チーム全体に漂っていた。

恩塚監督は「リーグ戦の2戦目で、選手が全然バスケットを楽しめていなかった。私が見て感じたのは『私がこれをやるべきだ。これをやらなければならないと思っているように見えたのです。その姿を見たときに『何か違うな』と感じました。正直、このままリーグ戦を進んでも試合に勝てないと思いました。義務感でやっていると、ひとつやった後に『できてよかった』と安心して休んでしまうのです。選手にミスが重なる姿を見て、ロジカルに積み上げていけばうまくいくと思っていたのが違うことに気づきました」とシーズン前から積み上げてきた内容に違和感を覚えるようになる。

「この戦略でやってもうまくいかないなと思ったので、変えるということですね」

恩塚監督は、日本体育大学戦後に方針の変更や心境の変化を余儀なくされたのだ。

恩塚亨監督の変化からチームはどう対応したのか

©マンティー・チダ

「答えは現場にある。コーチは選手をよく見て、何をフォローしていけば良いのかを探していくということも提案していきたい」

このような方向性を示した恩塚監督だが、ここに至るまでの変化はスムーズにできたのだろうか。

「出来ましたね」と恩塚監督は明るく話すが、傍にいた選手たちへ「俺が変わったのはスムーズに受け入れたの?」と問いかける。

当時のキャプテンだった崎原成美をはじめ、選手たちは「結構、戸惑っていました」と話した後、崎原が「どこかで地雷を踏んだらどうしようという想いはありました」と恩塚監督が変化する前に戻ってしまうのではないかという不安を明かした。

ここで重要なのは、恩塚監督の変化がシーズン開幕してすぐに起こったことである。

「ダイエットと一緒ですから(笑)。僕はその時に良いと思ったことはしますから」と話すと、選手たちには「適応して頂いてありがとうございます」とお礼をしていた。

「ついていかないといけないというか、恩塚監督が変わられてから毎日キラキラしていたので、(私も)わーと思って。恩塚監督の指導は変わっていませんけど、愛情を本当に感じて、こんな風に自分たちのためを思ってやっているのかと知った時、それに応えたい気持ちがすごくありましたので、本当に楽しかったです。それまではやらないといけないという感じでした」

崎原はその時の心境を明かす。実際、このやり取りをしている間、恩塚監督や選手の表情はすごく笑顔で、爽やかな表情に満ち溢れていた。

選手からも口々に「恩塚さんのおかげで変わることができました」と感謝の意を表する。

仮に恩塚監督がシーズン前の方針を押し通していた場合、どうなっていたのだろうか。

恩塚監督やその場に居合わせた選手たち、それぞれから「難しかったと思います」と口を揃える。

「お互いにきちんと見切った感じですね」と恩塚監督が話せば、崎原も「信頼関係が深まらなかったと思います。コーチともですし、自分たちもきついな、限界を感じていました。インカレへ近づくにつれて、以前のままであればプレッシャーがあったかもしれない。でも変わったので」と続けた。

木村も自身のプレゼンで「根拠のない自信」を掲げる重要性を話す。

「根拠のない自信によって、自分がスーパーヒーローになること。憧れの選手やなりたい姿を思い描くことでワクワクし、成長を意識できました。スーパーヒーローになったつもりで仲間を助けることが大事」とした。

「なんでバカなことをやっていたのだろうと」

こうして一人の指導者が変わったことでチーム内に大きな変化をもたらし、それが結果に繋がった。

シーズン前のことを改めて問いかけてみると、恩塚監督は「なんでこんなバカなことをやっていたのだろう。ロジカルに将棋だと思っていました。こうやって積んでいけば勝てるよ。だけど人間味が無かったですね」と呟くように話す。選手からは「AIだ!」と笑いながら指摘をされていた。

こうして、当時のことを笑い話のように振り返るが、きっと様々な葛藤があったに違いない。

恩塚監督や選手は「ワクワク」を手にしたことで、明るい表情や気持ちでバスケに取り組み、それぞれが「なりたい姿」を求めたことが「4連覇」という結果になったのだ。

©マンティー・チダ

恩塚監督はイベント終了時に、吉田亜沙美AC就任を発表した。選手たちも知らなかった模様で、発表の瞬間に歓声が聞こえた。

「まだまだワクワクを注入していかないといけませんから」とした恩塚監督。

なりたい姿をさらに求め続けることで、結果を掴むことができる。

東京医療保健大学女子バスケットボール部が私たちにどんな光景を見せてくれるのか。

これからの活躍に期待したい。

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