文 マンティー・チダ
ラグビー「リポビタンDチャレンジカップ2022」最終戦が7月9日に国立競技場で行われ、日本は世界ランキング2位でテストマッチ9連勝中のフランスに15-20で惜敗。後半途中までリードしていた日本だったが、途中出場のバティスト・クイユーにスクラムから空いたスペースを狙われて失点し、これが決勝点。日本はフランスからの大金星を逃した。
山中亮平の2トライで前半を折り返すが、フランスに逆転負け
1週間前にもフランスと対戦していた日本は、前半13-13の同点で折り返したが、後半に入ってから立て続けに失点をして23-42で完敗。前半で互角な戦いぶりを見せていたことで後半からの展開次第では、1973年10月の初対戦以来12戦目で歴史的な勝利が期待されていた。
9日のフランス戦ではSHに斉藤直人が復帰し、SO李承信とのハーフ団を形成。24歳と21歳の若手コンビが日本の攻撃を牽引することになった。先制点こそフランスに許したが、前半12分、自陣から左サイドへ展開して敵陣に入ると、WTBゲラード・ファンデンヒーファーが一気に駆け上がり、追走していたFB山中亮平へラストパスを供給。山中がそのままインゴールへ滑り込んで5点を返した。
18分には、敵陣でのスクラムからフランスのオフサイドでペナルティを獲得すると、日本はショットを選択。李のペナルティーゴールでフランスを8-7と逆転した。
その後はしばらくの間キックの応酬となり、日本の1点リードで前半が終わると思われた終了間際の40分。日本はハーフウェイライン付近でボールを奪うと、左サイドへテンポの速いボール回しからCTB中野将伍とHO坂手淳史がオフロードパスで繋いでFLリーチ・マイケルへ出す。リーチは、選手一人交わして22mラインの突破をすると横に位置をとっていた山中へパス。山中はポスト下にこの日2本目のトライを成功させるなど、日本が15-7でフランスをリードして前半を降り返した。
後半に入って、追いかけるフランスが早めに選手交代のカードを切ってくる。3分に3人を交代させた直後、日本のオフサイドで獲得したペナルティでキックを選択。これをSOマキシム・ルクが決めると、さらに6分に2人、10分に1人を交代させていく。日本はこの間、自陣での戦いを強いられ、18分には堀江翔太を投入して流れを変えたいところだったが、20分にフランスSOマチュー・ジャリベールにペナルティーキックを決められて、日本は2点差に追いつかれる。
後半25分に、日本はハーフ団を茂野海人と田村優に交代させるが、途中から出場していたフランスのバティスト・クイユーに、スクラムから一瞬の隙を狙われてトライを奪われた。
日本は、こちらも途中出場のテビタ・タタフが果敢にインゴールへ突進して、一度はレフェリーからトライが認められるものの、TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)の判定からノックオンとされて得点機を逃す。田村もパスを受けて勝負に出たものの、相手のタックルにあってファンブル。No.8ジャック・コーネルセンがパスを受ける際にキャッチをし損ねるなど、日本はこの時間にミスが重なってしまった。結局、日本は後半無得点に終わり、フランスに逆転負けを喫した。
57011人がつめかけた国立競技場、斉藤直人や李承信、ワーナー・ディアンズら若手選手がアピールに成功
国内テストマッチでは過去最高の57011人が詰めかけた国立競技場は、開始前から拍手などで盛り上がるなど、この上ない雰囲気で、試合は行われた。
日本の得点は、自陣からのゲインがきっかけとなり、パスで繋いでトライまで結び付ける。機動力を存分に生かしたラグビーは、世界ランク2位の強豪相手でもしっかり通用することを証明してみせた。
後半に入ると、お互いに蹴りあう展開となり、少し膠着状態になる。その中でフランスは、日本のペナルティで獲得したキックを確実に決めて、スクラムからのワンチャンスをものにした。対して日本は、後半終盤にラインアウトから得点機をノックオンやミスで失った。ここに両チームの差が生じたように思える。
ただ、まったく手が届かなかったのかと言われれば、そんなことはない。ジェイミー・ジョセフHCは「勝てる場面があったにもかかわらず、勝つことができなかった」とコメントすれば、主将をつとめた坂手も「悔しい。勝つべきゲームでしたし、勝てるところまで行けた」とチームに手応えを掴んでいる。あとは「最後の遂行力」と坂手が振り返るように、試合終盤でチャンスとなったセットプレーの場面だ。その時間帯には、茂野や田村、さらに日本代表キャップ68を数えた堀江翔太もいて、交代でグラウンドへ入ってきた選手たちが中心だった。選手選考も含めてこれからの課題となるだろう。
来年にはワールドカップが控えている。日本は予選プールでイングランドやアルゼンチンらと同じ組に入ったが、おそらくギリギリの戦いが予想される。そうなると、試合終盤の戦いというのはより一層重要視されることになるのだろう。
今回のフランス戦では、斉藤や李に加えて、攻守で躍動したLOワーナー・ディアンズやWTBシオサイア・フィフィタら若手選手がアピールに成功し、34歳のFB山中も2トライと結果を残した。タタフもトライまであと一歩だったものの、勝負どころの破壊力をアピール。
フランス戦に出場していない主力級の選手も控えていることから考えても、日本代表の選手層は厚くなったと言っても過言ではない。11月にはヨーロッパ遠征が控え、イングランドやフランスとの対戦を予定している。ティア1(世界ランキング上位10か国)に名を連ねている日本(10位)にしてみれば、フランス戦は成長の余地を残したものと後に語り継がれるようであれば、今回の敗戦は価値あるものとなるだろう。