文 マンティー・チダ
関東大学春季大会は6月6日、早稲田大学上井草グラウンドで1試合が行われ、早稲田大学が日本大学を31-17で勝利した。東海大学との試合に敗れてから約1か月経過したが、展開の早いラグビーに加え、フィジカルの強い日大に対してスクラムで互角に戦いを挑んでいった。
早大はフィジカルの強い日大とFW戦でも互角な戦いを演出、隙を付いて得点も
先制は早大だった。前半8分、自陣で日大のハイパントを受け取ると、FB河瀬諒介が左サイドからラインを上げていく。ブレークダウンから敵陣へ入り込むと、CTB岡﨑颯馬が抜け出してWTB槇瑛人へパス。槇は一気に加速して敵陣22mラインを突破すると、最後は鏡鈴之介が押し込んだ。
前半16分にはスクラムで日大のファウルを誘い、タッチキックで敵陣22mラインへ入っていくと、ラインアウトから早い展開でパス回しをし、快足を飛ばした槇からPR小林賢太へ渡ってトライ。追加点をあげることに成功する。前半45分にはSO吉村紘がペナルティーキックを決め、17-0で前半を折り返す。
後半に入ると、日大にモールで押し込まれて1トライを返されるが、早大は12分に日大のペナルティーからリスタートして一瞬の隙を付くと、右サイドから駆け抜けた槇がインゴール右隅に飛び込んで、日大を突き放す。
その後、早大は日大に1トライ1ゴール差まで詰め寄られるが、タックルからボールを奪い、日大にノットリリースザボールをコールさせると、吉村がリスタートを選択。ブレークダウンを繰り返しながら、左右にパス回しを続けてゴール前5mラインまで接近。ラインアウトからモールに持ち込むとHO川﨑太雅がトライ、吉村がこの日4本目のキック(うち1本はペナルティー)を成功させて、日大に14点差をつけた。
リードを広げた早大は、最後まで日大の重量感あふれるスクラムに屈することなく、ラインアウトなどのセットプレーでも冷静に対処。31-17で日大を下した。
FW陣で準備してきたセットプレーの成果を強調
早大は前回の東海大学戦と違い、早いパス回しから日大を疲れさせてみたり、フィジカルの強いFW陣に対しても互角以上に渡り合った。しかし、試合中盤で日大のモールに屈する場面もあり、試合全体で考えると、まだまだ課題面が見え隠れする。
早大・大田尾竜彦監督は「ボールを動かしてアタックをしたいという意思があるのですが、なかなかインプレーが少なくて不完全燃焼」とチームとして納得できる内容ではなかったようだ。
この日ゲームキャプテンをつとめた小林は「テーマとして自分たちでやり切るという目標でしたが、80分を通してやり出来ていなかった部分もありました」と全体を通しては少し不満を抱いてようだが、今年度特に力を入れているスクラムについては「結果が出た。ポジティブに捉えても良い」とフィジカル面で優位に立つ日大に対して、スクラムなどで相手のペナルティーを誘うなど、練習の成果を出していた。
小林と同じくFW1列目のPR木村陽季は「準備してきたセットプレーは成果が出せた」と話すが、反省点として「(日大の)接点やコンタクトが強くて、前に出られる場面が多かった」と相手FWに押し込まれていた場面をあげた。「もっと強い早稲田を見せていきたい」と今後の試合に向けて抱負を述べるが、そのためには速さに加えて、強さと正確さをより一層求められるのだろう。
一方の日大はフィジカルの強いスクラムを持ち味とするが、この日はスクラムを組んだ際の不用意なペナルティーや早大のはやい展開に翻弄されていた。スクラムが強ければ良いというわけでもなく、バックス陣を中心に速さを求められるようになる。
「早稲田の展開ラグビーを日大ができるようにしていきたい」とHO林琉輝がコメントをするように、展開の早いラグビーをするチームに対して、どのような対処をしてくるのか。持ち味であるフィジカルをさらに強くさせるのか。バックス陣を中心にスプリント力を求めるのか。アプローチ次第で今後の展開が変わっていく。ひと夏を超えて、どこまで成長できるのか注目してみよう。