文 マンティー・チダ
五郎丸歩の現役ラストマッチは静かに終わった。
ラグビー・トップリーグは東京・江戸川区陸上競技場で24日にプレーオフ2回戦1試合が行われ、ヤマハ発動機はクボタに12-46で敗退し、最後となるトップリーグのシーズンを終了。今季限りで現役引退を表明していたFB五郎丸歩はベンチから外れ、スタンドで現役ラストマッチを見守った。
トップリーグ得点王を通算3回獲得、「五郎丸ポーズ」でラグビーワールドカップ2015を沸かせた
五郎丸は中学生でラグビーを始めると、佐賀工業高時代には3年連続で全国高等学校ラグビーフットボール大会へ進出し、いずれもベスト8に。卒業後は早稲田大学に進学し、1年生からフルバックのレギュラーとして活躍、全国大学選手権では優勝を経験した。在学中には日本代表へ初招集され、2005年4月にウルグアイ戦で代表デビューする。
大学卒業後の2008年4月、五郎丸はトップリーグのヤマハ発動機へ入団。2010年9月4日のNEC戦ではトップリーグ新記録となる8ペナルティーゴールを記録。2011-12シーズンからは2シーズン連続で得点王とベストキッカー賞を獲得するなど、日本を代表するフルバックへ成長していった。
2015年にはラグビーワールドカップ2015の日本代表に選出され、グループリーグ4試合に出場。第3戦のサモア戦と最終戦のアメリカ戦ではマン・オブ・ザ・マッチとなり、スコットランド戦では、執念のタックルでトライを阻止したシーンを演出し、世界を驚かせた。そして、キックを蹴る前のルーティンである「五郎丸ポーズ」は2015年の新語・流行語大賞にノミネートされるなど、ラグビーを大いに盛り上げた選手だった。
2015-16シーズンでは3季ぶりに得点王を獲得し、リーグ通算1000得点今季達成選手として特別賞を受賞する。2016-17年シーズンは、フランスのRCトゥーロンに移籍。2017年7月にはヤマハ発動機へ復帰を果たしていた。
五郎丸の現役ラストマッチはスタンドから、チームメートや大学の後輩からコメントも
この日のクボタ戦ではベンチ入りを逃したことで、スタンドから戦況を見守った。
試合後の記者会見では「長い間お世話になりました。長いことラグビーをやってきて、今日が一つ終わりを迎えたということで、非常に悔しい想いはあります。この悔しい想いをグラウンドで晴らすことはできませんが、セカンドステージに向けて自分の大きなモチベーションとして頑張っていきたい。後日、自分の気持ちを整理した上で記者会見をさせていただければと思います」とコメントした。
ヤマハ発動機・堀川隆延GM兼監督は「五郎丸はコンディションが100%ではないという私の判断でベンチから外しましたが、若いという理由で奥村翔を使ったわけではない。スタイルを持ってやり切れる選手なので、今回は彼(奥村)に託しました」と五郎丸の欠場理由を説明する。
主将の大戸裕矢は「(五郎丸から)直接アドバイスはありませんでしたが、激しいエナジーと気迫というのは僕たち自身刺激になった。体で見せてくれる大先輩がいるので、勝って次に行くというのはありました。プレイヤーとしては引退されますが、これからもリスペクトしていきたい」とコメントした。
早稲田大学の後輩にあたる、瀧澤直(NEC)は「一人の選手として2015年ワールドカップを盛り上げてくれて、ラグビー界のためという形をとってくれました。そういう選手の引退は感慨深いものがあります。心からトップリーグの全選手が『ありがとうございました』と言える方ではないかなと思います」と想いを綴る。
五郎丸は現役引退に際し、後日改めて記者会見を開くとした。ラグビー界を盛り上げてきた裏側はどんな感じだったのだろうか。注目してみたい。