文 マンティー・チダ
Bリーグアースフレンズ東京Z・U15岩井貞憲HCの第2回目。
前回の記事掲載後、チームは令和2年度東京都U15バスケットボール選手権大会兼第1回全国U15バスケットボール選手権大会東京都予選、B.LEAGUE U15 CHALLENGE CUPに臨んでいた。
東京都U15バスケットボール選手権大会では見事に優勝を果たして、来年1月開催予定のジュニアウインターカップ(第1回全国U15バスケットボール選手権大会)も出場権を確保。B.LEAGUE U15 CHALLENGE CUPでは開催地の茨城ロボッツU15に次いで2位という成績に終わった。
今回は東京都U15バスケットボール選手権大会とB.LEAGUE U15 CHALLENGE CUPの総括を中心に、岩井HCに様々な課題や想いをたっぷりと語ってもらった。
試合はしてみないとわからないこともある
「成長できる余白ですかね。成長できる幅がもっとあることを、私も彼ら自身も見つけることができました。そういう意味ではうれしいですし、すごく良かったと思います」
B.LEAGUE U15 CHALLENGE CUPで準優勝を果たした後、岩井HCがインタビューで最初に話した内容だ。
練習で味わう成果とは違ったものを感じたのだろう。
「新しい相手と言いますか、切磋琢磨できる能力の選手たちと試合ができるのは成長しかない」と繰り返し「成長」という言葉を使った岩井HCだが、やはり「試合はしてみないとわからないこともある」と改めて実感する。
オールコートのバスケットボールにこだわるが課題も
B.LEAGUE U15 CHALLENGE CUPでは2日間で4試合とハードな日程の中、3勝1敗と準優勝で終えたアースフレンズ東京Z・U15。
岩井HCは試合におけるコーチングについて「いつも大会を通して思うことですが、自分自身 がよくできたなとは思うところがあまりない」と自己評価する。
「良い部分は消え去られ、課題改善に対して着眼というか、もっと選手を成長させられるような試合運びができたのではないかなと思います」
岩井HCは試合中、緊張感を持ちながらコートサイドに立って戦況を見つめていた。
「コートサイドに立つと毎回緊張感は違いますし、選手も違うでしょうね。私自身も勝敗に対する緊張感はもちろんありますが、メンタル面で一番負荷になるのは、預かった選手たちをこの試合でどう成長させられるのかです。可能性のある選手は多いですし、保護者の方もこの期間を他のチームではなくてアースフレンズ東京Z・U15を選んでくださっている。その期待に対するプレッシャーは毎試合苦しいです」と話す。
今大会を通して取り組んでいたことが「オールコートのバスケットボール、トランディションバスケをどう構築していくのか」だった。
練習から取り組んできて「中学生の年代では心肺機能が成長する時期なので、持久力が向上できます。ただ、走った勢いでどんどん行くことはやりたくないので、考えながらどこを走るのかなどの状況判断も必要」と岩井HCはオールコートのバスケットボールにこだわる理由を説明した。
個人レベルでは、持ち味を生かしながらも課題をどう解決させるのかというところに着眼点を置いていたが、ある課題にも直面していた。
この大会は2日間で4試合というハードな日程。
「ハーフコートを作るという感覚を身につけていかないと難しいです。この大会フォーマットであれば疲れてしまうので、ハーフコートで得点をする感覚を身に着けることでバスケットIQの向上に繋がります。大会を通して、走ってバスケットを構築させるという可能性は示せたし、選手がどんどんアタックできたのは良かった」と次なるステップを岩井HCは見据えていた。
体のケアについては日常生活の部分から伝えていかないといけない
B.LEAGUE U15 CHALLENGE CUPを通して、岩井HCは競技面以外でも課題に直面する。それは「選手の体のケア」についてだった。
「大会を通して、チームでホテルに宿泊していました。普段であれば、自分が住み慣れている家でお母さんが食事を作ってくれます。私の主体性を発揮するならば栄養とか体のケアの仕方やグッズ、そういうものをきちんと準備してあげないといけないし、日常生活の部分から伝えないといけない」と岩井HCは危惧している。
アスリートにとって、技術やメンタルとともに体のケアは重要な要素だ。日ごろから恵まれた環境で生活していると、初めての環境に適応するまで時間がかかる。
「大会に近づくと緊張もするし、普段感じることのない感覚にも襲われると思いますから。選手は疲労がすごく早かったと思います」
ただ、普段から厳しい環境に落とし込むのも難しいものがある。
屋外スポーツであれば、天候の悪い日に泥んこのグラウンドで練習し、ストレス耐性を上げていくという方法もあるが、アリーナスポーツとなれば設定そのものが難しい。
子どもたちの心理的な安全性は確保した上で、良い意味で身体や精神に対してストレスをかけてあげるべきだが、なかなかできないところである。
「海外に連れていくのが一番。現地の人と母国語が違いますから話せないし、場所によっては日本のビジネスホテルより環境の悪いところもあります。食やバスケットボールの文化も違いますので、これが一番の気づきかな」と岩井HCは海外へ行くことを薦める。
こうして普段とは違う環境で試合に臨むことで新たな発見が見つけられるのも、この世代特有なことだ。
これからも試合は控えているが、岩井HCは「大会に向けてどうこうということではない。日々どのように課題を解決していくのか、選手をどう成長させるのか、大会でもそうです。一番考えるべきことは、選手それぞれが大会を踏まえてどう伸ばしていくのかしかありません。13人いますから、13パターン考えないといけないのでそこは私の仕事かな」と今後の方向性を示す。
現在、U15は岩井HCで運営している。「1人のコーチに対して13選手なので、コーチの考え方としてブレは生じません。若い世代から1人のコーチに染まるというのは良くないと思っています。大事なことはチームとしてのスタイルや東京Zのユースとしてあるべき姿、スタイルがあれば目標がゴールでもありますし、そのための手段として別の視点から話を聞いて、子どもたちがそれを踏まえてどういうような行動をするのか。今後はこれらを構築していきたい」とチームとしてのあり方も考えていく必要があるとした。今後の動きにも注目していきたい。