文 マンティー・チダ
Bリーグ1部に所属する横浜ビー・コルセアーズ(以下 横浜)は、横浜国際プールに名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(以下 名古屋D)を迎えて第7節を戦った。
コロナ禍の影響で合流が遅れていた#4ロバート・カーター、故障で今週からチーム練習に加わっていたキャプテン#46生原秀将も出場を果たし、ここにきてようやくロスター全員が出揃った横浜だったが、西地区3位の名古屋Dと接戦まで待ちこむも連敗、これで9連敗となった。
前半に1点差まで詰めるも、4Qでリードを広げられる
勝ちに恵まれない中で試合内容がそれほど悪かったのかと言われれば、そうでもないように見えた。
勝負事なので引き分けが無い限り、どちらかが勝ちチームになり、負けチームになるわけだ。それだけ勝負事は残酷なものでもある。
内容を振り返ってみると、GAME1は横浜が1Qでリードしたものの、名古屋Dに3pを高確率で決められて、81-82とわずか1点差ながら敗れている。
GAME2は出だしから横浜のシュートが決まらず、名古屋D#32狩野祐介や#10レオ・ライオンズの3pなどで引き離される。
一時は9-19までとされるが、横浜も#9森川正明のキャッチアンドシュートや#1パトリック・アウダの3pで5点を獲得し14-19まで持ち直して1Qを終了。
2Qに入ると、名古屋D#18中務敏宏に4点シュート、さらに速攻からの3pなどで5点を失い、わずか2分少々で9点を荒稼ぎされ、横浜はたまらずタイムアウト。
その後、アウダの好守もあって粘りを見せる横浜だったが、点差は詰まることなくオフィシャルタイムアウトを迎える。
タイムアウト後、横浜は#2ケドリック・ストックマン・ジュニアをコートに入れてゾーンディフェンスを仕掛けた。
最初の守備でしのぐと、カーターが3pを決める。
次の守備で名古屋に3p攻勢を仕掛けられ、オフェンスリバウンドで粘られながらも得点を抑えると、ストックマンがダブルクラッチを入れて4点差まで詰める。
名古屋Dがタイムアウトで流れを切ろうとするが、横浜はストックマンがレイアップを沈めた後、生原をコートに戻してツーガードとする。
これが功を奏し、カーターのフローター、アウダのバックショット、生原もバックコートから自ら持ち込んで3pラインの外からシュートを入れて、40-41と1点差まで追い上げたところで前半が終了。
このまま良い流れで後半から入りたい横浜だったが、#7レジナルド・ベクトン、#22秋山皓太、#18森井健太と続けざまにファウルをコールされる。
その後粘っていたものの、残り5分を切らないうちにカーターがこの日3つ目の個人ファウルを喫し、チームファウルも5つ目を数えた。
#10アキ・チェンバースのファストブレイクで横浜は追い上げを図るが、ファウルトラブルが影響しフリースローを献上。名古屋Dが確実に入れて、51-57となり3Qが終了する。
4Q、切り替えていきたい横浜だったが、名古屋D#24ジャスティン・バーレルにポストプレーから先制を許すと、#9安藤周人のドライブ、横浜のターンオーバーから#8張本天傑が速攻で得点され、51-64とリードを広げられる。
終盤、横浜はカーターと秋山が3pを沈めるが、追い上げるところまでいかず71-79で名古屋Dに敗れた。
カイル・ミリングHCが仕掛けた「ゾーンディフェンス」と「ツーガード」
GAME2で横浜が見せ場を作った場面といえば、2Qオフィシャルタイムアウトからゾーンディフェンスを敷いたところからだ。
ゾーンディフェンスとは担当するエリアを守るシステムである。
マンツーマンディフェンスは、マッチアップする特定の一人を守るやり方とは違うシステムだ。
ゾーンディフェンスは試合の流れを変えたいときによく使われるのだが、5人が一体となってペイントエリア周辺を守るため、スペースができにくいという特徴がある。
もっといえば、ペイントエリアを守るシステムなので、ゴール下に選手が入っていくのは容易ではない。
インサイドに侵入できないとなれば、アウトサイドから3pを狙っていくというのが一番効果的と言われている。
名古屋Dは3pシュート成功率がB1では三河、千葉に次いで3番手(第7節時点)。GAME1では14/27と成功率51.9%を叩き出しているチームだ。
GAME2においても、2Qのオフィシャルタイムアウトを迎えるまで、中務らに3pを決められていたのだ。
そして、タイミングとしてもライオンズに3pを決められてから、横浜の攻撃で3秒バイオレーションがコールされた後のタイムアウトでもあったのだ。
これだけ3pを決めるチームに対して、横浜カイル・ミリングHC(以下カイルHC)はここであえてゾーンディフェンスを敷く。いわば奇襲だ。
「違うことをすることで相手のリズムを崩すのが目的」としたカイルHCは、残り2分7秒で生原をコートに戻してストックマンとツーガードを組ませる。
「前半に限っては僕たちがやるべきことをできていませんでした」と名古屋D梶山信吾HCが振り返る通り、相手のリズムを崩して思うとおりにやらせない状況は作ることができていた。
しかし、後半になれば試合終盤にゾーンディフェンスを組むことはあっても、前半で機能していたツーガードのカードを切ることもなく、試合は終了する。
生原秀将のプレータイムを制限する必要があった
後半でツーガード起用が無かったことについて、ブースター心理としては「なぜ?」と思うかもしれない。
筆者もそこは疑問に感じたので、後半にツーガード起用しなかった理由を直接表現する形ではなく、あえて「ツーガードやゾーンディフェンスはチーム作りとしてオプションなのか」という内容でカイルHCに直撃すると、開口一番でこんなコメントが返ってきたのである。
「生原のプレータイムをこちらで調整する必要があった」
そう、今節から戦列復帰した生原は、まだ完全な状態では無かったのだ。
さらに言えば「対人練習に復帰したのは今週から」と生原が話す。
チームのポイントガードは生原と森井、ストックマンの3人。
これまでは森井とストックマンしかいなかったので、練習でツーガードを試すことは不可能だ。
ツーガード起用について「練習を含めてもこの日が初めて」だったのだ。
このツーガードもカイルHCがぶっつけ本番で仕掛けてきたものだったが、生原のプレータイムに制限があり、後半でそれを使うことができなかったというのが正しい表現のようである。
「生原は怪我の回復次第にもよりますが、もっと試合で使いたいというのはもちろんあります。彼がもたらすチームエナジーやゲームをコントロールすることはメインでやってきただけありますから」とカイルHCは生原を評価。
生原も「そういうシチュエーション(ツーガード)もあるだろうと想定していた。これが増えるかどうかはカイルHCの判断によりますけど、一つの作戦であるのではないか」と手応えを掴んでいるようだ。
現在9連敗で東地区最下位の横浜。
お世辞にも成績を褒められるものではないが、ようやく今シーズンのロスターがここに揃ったのだ。
これまではコロナ禍という言い訳ができたのかもしれないが、これからはそれも通用しなくなる。
チーム力の更なる向上とカイルHCの奇襲がチームに嚙み合えば、連敗は早いうちに無くなるのではないだろうか。