【ウインターカップ2020】東山が明成の戦術に真っ向勝負で掴んだ準優勝に「あっぱれ」

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バスケットボール
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SoftBankウインターカップ第73回全国高等学校バスケットボール選手権大会は29日に男子決勝が行われ、東山(京都)は仙台大学付属明成(以下:明成 宮城)に敗れて初優勝を逃した。

東山は2Qで速攻を繰り出してペースを掴むと、#9ムトンボ ジャン ピエールがセカンドチャンスからの得点を重ねて、前半終了時には明成を40-26と大きくリード。

しかし後半に入り、明成にじりじりと追い上げられる。

4Q残り16.4秒のタイムアウト明けで、明成#8山﨑一渉にオフェンスリバウンドからジャンパーを決められて、これが決勝点となった。

今年の決勝戦は最後のクロスゲームで勝敗が分かれたものの、そこまでにも伏線があった。

ゾーンディフェンスを駆使しながら、時にはプレスでプレッシャーをかけるなど、様々な戦術で対抗してきた明成に対して、東山は正々堂々と最後まで勝負していた。

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明成のゾーンディフェンスをベースにした戦術に対して真っ向勝負を挑んだ東山

東山は明成のオフェンスに対して、ずっとマンツーマンディフェンスで戦っていた。

一方、オフェンスに関しては、#11米須玲音を中心にモーションオフェンスを展開するかと思えば、リバウンドやターンオーバーからのスピード感溢れる速攻で明成を攻略し、前半は40-26とリードして折り返していた。

しかし、後半開始早々から明成に意表を突かれる。

前半ずっと微妙に変化しながらゾーンディフェンスを敷いていた明成が、後半最初のポゼッションではマンツーマンディフェンスに切り替えていた。

これに東山の選手たちが面喰ってしまう。

「明成は40分間ずっとゾーンディフェンスで来るのかな」と#7中川泰志がミーティングで話があがったことを明かしてくれた。

それだけ東山は明成のゾーンディフェンスを常に警戒していた一方で、それ以外のディフェンスで臨んでくるという想定ができていなかったのである。

「(ゾーンディフェンスのはずが)マンツーマンディフェンスで来てしまい、そこから切り替えができなくなり、ゾーンディフェンスの動きでオフェンスに入ってしまったことで、動きが鈍くなりました。あの場面でマンツーマンディフェンスへ変わっていることに気付いて、それに対するオフェンスで足を動かすべきでした」

中川はここで流れの分岐点になったことを認める。「明成は凄いしさすがだなと。対応できませんでした」と脱帽だった。

日本一になるというプレッシャーにやられた

東山は大会を通して、4Qでクロスゲームになったのは決勝戦が初めてだった。

福岡第一、北陸とタフな接戦を勝ち上がってきた明成とは対照的に、東山は完勝の連続。決勝戦は明成をリードしていた状況から追いつかれてクロスゲームとなり、日本一を目前にして初めて大きなプレッシャーと戦っていた。

「日本一になるというプレッシャーにやられたのが正直な感想」とは試合後の記者会見で東山の大澤徹也コーチが漏らした最初のコメント。

今大会で試合終盤にクロスゲームを経験していなかった東山にとっては、厳しい局面だった。

大澤コーチは「最後に決められなかったのはベンチワークの差」と敗戦の責任を自ら背負う。

「最後のタイムアウトは少し早かったかなと思いましたけど、あそこで使わないといけない場面でしたので、迷いはありませんでした。タイムアウトはこれ以上取れない状況でしたので、ディフェンスとオフェンスでやるべきことを確認して徹底すること、ファウルをしないことなどを伝えていましたが、最後は(山﨑)一渉君の意地にやられました。でも、子どもたちは本当によくやってくれましたね」と終盤の場面を振り返った。

自分のパスから流れを変えていくというチームスタイルができなくなった

司令塔としてチームの中心的な役割を担ってきた米須に対して、大澤コーチは「花丸を上げられる」と評価していた。

米須は「コロナ禍の影響で試合に出場できなかった皆さんのためにも、楽しんでプレーをするように考えていた」と決勝戦に臨んだが、準優勝に終わったことについては悔しがっていた。

「前半は自分たちのペースで攻めていました。後半は明成が前からプレスで当たってくると予測をしていましたが、思っていたよりもディフェンスの圧力がすごくて、自分たちが受け身になってしまった。プレー面よりはメンタルでやられてしまいました」とコメント。

東山は明成のゾーンディフェンスに対して、前半ではスムーズに戦っていたが、後半は明成がディフェンスのギアをあげてきたことにより、前半にできていたことが後半ではできなくなっていた。

米須は明成のゾーンディフェンスについて「平均身長が高いしリーチも長い。いつも出せているパスがなかなか通らない場面もありました。ターンオーバーも多くなって、自分のパスから流れを変えていくというチームスタイルが決勝戦で作ることができなくなり、チームには迷惑を掛けました」と話す。

実は4Qに入る前、明成佐藤久夫コーチがチームに米須の抑え方を指示していた。「ぴたっと張り付かず、縦にドリブルをさせない」と。これにより、東山は米須からの展開が少なくなったことで、試合の流れが明成へより傾いていったのである。

玲音が最後フリースロー3本決めてくれたのに、セカンドチャンスをやられてしまった

米須とともに戦ってきた中川は「前半からゾーンディフェンスは変わっていませんでしたが、気迫がすごかった」と明成の気迫を感じ取りながら、終盤のクロスゲームを迎えていた。

「自分らには(米須)玲音がいると考えて、玲音が何とかしてくれると。最後フリースローを3本決めてくれたが、自分らでリバウンドが取れなくてセカンドチャンスをやられてしまった。そこはすごく責任を感じています」と反省する。

想定外のことに対しても、冷静に判断できるのかが重要である。

ずっとゾーンディフェンスだと思わせておいて、どこかでマンツーマンディフェンスがあるのではないかという予防線を張れなかったのは悔やまれるところだ。

今大会を通して、明成の戦術はたとえ苦しい場面でも効果を発揮していた。

実際、明成佐藤コーチも「実際に自分たちのバスケができたのは、4試合のうち決勝戦最後の5分間だけ」と記者会見の席上でコメントしている。

明成にしてみれば、作り上げてきた戦術をしっかり出し切れば勝利につながるという確信めいたものもあったのだろう。

東山は決勝で敗れたが、明成の戦術に対して真っ向勝負で挑んでいった。

唯一それが崩れたのは4Q終盤のクロスゲームになった場面。

大澤コーチは記者会見で何度も「子どもたちは本当によくやってくれました」と選手たちを讃えていた。

大会に出場するからには「優勝したい」という目標が芽生えて勝利のための戦術に走りがちだが、どんな状況であっても正面からぶつかって勝負に挑んだ東山には「あっぱれ」であり、今後に繋がる「価値ある準優勝」としたい。

彼らは高校3年生であり、これから伸びる余地が大いにある。

戦術を極めることも重要だが、どんな選手を目指すべきなのかを明確にして、常に状況判断ができる選手になってもらいたいと切に願うばかりである。

次のステージでも真っ向勝負で挑んでもらいたい。

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