文 マンティー・チダ
横浜ビー・コルセアーズ（以下横浜BC）は、今シーズンの開幕から6試合で3勝3敗の成績としている。まだ6試合しか消化していないので、なんとも言い難い状況ではあるが、ここまでの6試合でディフェンスから存在感を大いに発揮している選手がいた。今季からハマの海賊船員となった#8古牧昌也である。
東京Z、群馬と渡り歩いて、今季から横浜BCへ移籍
©マンティー・チダ
バスケットボールと言えば、華麗なパスワークや派手なダンクシーン、迫力あるスピード感といったシーンを思い浮かべるだろう。どれも攻撃面におけるのものだが、古牧は相手チームのエースをしっかり押さえる「エースキラー」ぶりを発揮している。
古牧は、Bリーグ2シーズン目の2017年に、B2のアースフレンズ東京Zと契約し、プロキャリアをスタート。昨シーズンは、群馬クレインサンダーズでキャプテンをつとめ、チームを圧倒的な勝率でB1昇格へ導いていた。
今シーズンから横浜BCへ加入した。古牧にとっても、初めてのB1の舞台。開幕節となった川崎ブレイブサンダースとの試合では、新外国人のマット・ジャニングに得点を許さず、一時はチームを逆転に導く活躍を見せていた。
そして、ホーム開幕戦となった、サンロッカーズ渋谷戦。古牧はプロ契約となる前に、練習生として所属していた千葉ジェッツで、「何をするにもアドバイスをもらっていたような、本当に師匠のような人」#27石井講祐とコート上で5シーズンぶりに再会する。
「存在感は100点以上。お金を取れるようなディフェンスをしてくれた」横浜BC・青木勇人HC
©マンティー・チダ
前日は石井にシーズンハイの14得点を許していた横浜BC。「ハーフコートのセットでディフェンスするように持っていくことが重要だと思いましたので、そのためにはターンオーバーやセカンドチャンスを与えないこと」とは横浜BC青木勇人HC。
「あとはスコアラーに対して、追いかけまわすところができていたので、今日は良い結果に繋がった」と前日に2桁を許していた、SR渋谷#9ベンドラメ礼生、石井の得点を抑えたことを勝因の一つにあげている。
その代表格が古牧だった。スタッツ上は0点に終わっているが、「存在感は100点以上。ブースターさんの皆さんへ届くような、お金を取れるようなディフェンスをしてくれた」と青木HCは古牧のディフェンスを大いに評価。
「今回は４Qにぶち当てようと考えていて、相手に嫌がられるようなマッチアップにしようかと考えていた」と青木HCにしてみれば、これ以上ないディフェンスの切り札となっていた。
千葉J練習生時代にチームの主力だった「師匠」石井講祐との熱いマッチアップ
©マンティー・チダ
「ホーム開幕戦で何が何でも勝ちたいところでしたが、勝つことができなかった。2日目は、勝利を見に来てくださったブースターさんのためにも絶対勝ちたいという気持ちが強かった」
古牧は、ホーム開幕戦で敗れたことでこの日の勝利にかける思いは大きかった。1Q残り1分4秒でこの試合初登場し、さっそく「師匠」石井とマッチアップを敢行する。
「5年前に練習生で、石井さんから何をするにもアドバイスをもらっていたような、本当に師匠のような人に対して、自分はどのようにして成長した部分を見せられるのかというのは、試合が始まる前から気持ちとして入っていました。石井さんからすれば、相当嫌がっていたのはわかっていましたけど、自分の強みにおいて、必ず抑えてやろうという気持ちを持って取り組んでいました」
古牧は並々ならぬ想いで、石井とマッチアップをしていた。そして、石井に気持ちよくシュートを打たせないディフェンスを実行する。
「相当石井さんの試合は見ていました。左からの3p、左ドリブルの3pは必ず打たせないようにというのを、個人的に研究していました。それでも、右のドライブをやられてしまったのはありましたけど。（石井さんの）得意な部分を少しでもやらせないようにというのは、アグレッシブの中でも取り入れて戦っていました」
©マンティー・チダ
試合前の準備が、かなり出来ていた証拠だろう。これまでも情報収集においては「チームのスカウティングで得意な部分を教えてもらえますが、個人的にプラスアルファでちょっとずつ自分の考え方をもって、ディフェンスをしています」とまさに古牧は、自分の役割を熟知していた。
「ディフェンスに関しては、かなり自信を正直持っていますし、本当に誰にも負けたくないという気持ちもありますけど、少しでもその選手の得意な部分を消したいということで、良い形でチームに貢献できているかな」
古牧は、ここまでの6試合をこう総括した。今週末の次節は、ホームに日本代表経験者2人を補強した島根スサノオマジックを迎える。恐らく、古牧は昨シーズンのレギュラーシーズン最優秀選手賞を受賞した、日本を代表するピュアシューター#14金丸晃輔とのマッチアップが予想される。
「これからもエースと呼ばれる選手とマッチアップしていくことが多いと思いますが、そこはぶれずに、オフェンスでもっとチームに貢献できるよう、成長していかないといけない。日ごろから誰よりも練習をして、チームのためにも成長をしていきたい」
これからの活躍次第では、日本を代表するディフェンダーとして、大きく飛躍する可能性がある。「ビーコルのエースキラー」から「日本を代表するエースキラー」へ。その答えは、シーズンが終わるころにきっとわかるだろう。
